長嶋有「猛スピードで母は」「サイドカーに犬」

読みやすい小説。
筋書きも簡単。
イメージは喚起力がある。
私はいろいろなイメージの連想を誘発されながら読んだ。

苦労して読むのも、その成果の大きさを思うと楽しいのだが、
苦労しないで読むのもまた、楽しいことだ。

冷蔵庫の音がぷっりりと途切れるときのあの突然訪れる静寂を書いている。
なるほど。
そんな風な小さなヒントがいっぱいあって、
まだまだこの種の小さな発見は私を待っている感じがするのだ。

大思想が語られているわけではない。
分類すればやはり、小文章である。
でも、それでいいのだろう。

もう読むこともしばらくやめて、じっとしていてみようかとも考えている。
その果てに何が起こるか、見てみたい気がする。

生きることも読むことも無益なのだから
無益であるなりに考えてみようかと思っているのだ。
修行のように生きて、どうするというのか。
修行のように読んで何か益するところがあるというのか。
ただ楽しんで読むのなら、もうそろそろいいのではないかとも思う。
悦楽はあるが、その範囲も知れている。