山本周五郎「虚空遍歴」2

山本周五郎「虚空遍歴」については、

二十歳の頃、紀野一義の本で紹介されていたのを

読んだと記憶している。

多分自分はこのような本は読まないと思っていたし、

実際その後長い間読もうとは思わなかった。

無駄に長い話で、暇つぶしに困っている人が読む本だと思っていた。

少なくとも、私はいろいろと忙しい。

それが、今回は読んでみようと思ったのだ。

紀野一義の本のことも忘れていた。

「虚空遍歴」の後書き解説の中で、紀野氏の文章が引用されていて、

二十歳の頃のことを鮮明に思い出した。

そんなことからも分かるように、

今私は二十歳の頃と似たような危機的な状態にある。

ということは、つまり全然、成長・進化・深化していなかったということなのだろう。

それにしても、二十歳の頃は思わなかったのだ。

後年になって、

山本周五郎「虚空遍歴」を、

このような苦しい状況で読み、

二十歳の頃をこのように思い出すとは。

苦しい。