右傾化の自然圧力

先日、政治学の先生と話す機会があって、

学生気分でお話を伺いました。

アジアの政治が専門でして、

ユーロみたいなまとまりはどうかと聞いたら、

アジアは経済発展の段階もばらつきが大きいし、

政治的にも発展段階が大きく違うので、

当分は現実的ではないとのこと。

日本が米国気取りでいるうちに、

アジア経済圏を中国がとりまとめて、

日本が取り残されたら、どうなんでしょうと聞いたら、

それはまだ当分無理だから心配には及ばないとのことでした。

日本の株も不動産も、所有者は外国人になりつつあるわけで、

そのことを聞いたら、

それはむしろ、外国資本が真剣に日本のことを考えてくれる保証になるから、

悪くないだろうとのことでした。

なるほど、自分の資産だから、日本がダメにならないように配慮しようと思うはずで、

おかげで日本人も助かるだろうとのことです。

アジア外交については、福田首相の父、福田赳夫氏について、高い評価でした。

方向としてはまことに宜しいとのこと。

政治というと軍事の問題もあるわけですが、

日本が自衛隊をどうするのか、

近隣諸国は厳しい眼で見ているので、

たとえば従軍慰安婦問題にしても、南京問題にしても、

まず諸外国の理解が得られるような態度をはっきりと表明して、信頼を勝ち取る。

その上で、日本として必要な軍事力や同盟関係を構築すべきだとの見解でした。

9条の理想主義的解釈については懐疑的で、

現実の国際政治というものはそんなに簡単ではない、

一国理想主義でうまくいくものでもない。

近隣国が軍隊をもつことに反対する国はいない。

実際、自衛隊という軍隊は、国際的に見て質の高いものになっていて、

米国と共同作戦を実行できる、強い軍隊である。

これをどのように使っていくか、

つまり、国家としての方針が問われているというわけです。

わたしはどちらかといえば、理想主義的、平和ボケに近い人間なので、

専門家のこのような話を聞くと、

やはりそういうものかなあと改めて思います。

それぞれの家に戸締まりをしますし、セコムとも契約しますから、同じことでしょう。

集団的自衛権や国連中心主義、9条改正問題については難問である。

米国と中国と、今後どう関係を続けていくか。

中国の共産党と市場経済主義がどのような成り行きを見せるのか、

まったく予断をゆるさない。

実際、中国はどうなるか。わたしとしては中国株のことがあるので、聞きたいわけです。

貧富の差が拡大して、資本の集中が進行し、貧しいものはますます貧しくなる、

そしてある時点で革命が起こる、これがマルクス的テーゼなのであって、

まさに中国はこの路線を進んでいる。

しかも、革命後の共産党の指導のもとで!

一体何がどうなるのだろう。

しかしまた、下部構造の変動は、マルクスの時代とはかなり異なるわけで、

現状の下部構造の特質に応じた社会構造が形成されると期待していいだろう。

そしてそれは、現状の中国共産党ではないだろうとの話でした。

共産党と市場経済のねじれはいずれ致命的な結果をもたらすだろうとのこと。

やはり中国株はわたしは買わないでおこうと思いました。

世界的に右傾化が進行したここ数十年でしたが、

世界というものは、放置しておけば右傾化してしまうものでしょうかと質問しました。

商業マスコミの発達は、自分で判断する力を持たない、容易に操作される大衆を生み出し、

政治はそうした層にアピールせざるを得ません。

理性と知性を軽視する論壇が形成され、

しばらく新聞とテレビはそうした声に支配される。

それは現状の下部構造がある限りどうしようもないものであるとのこと。

政治学者として、処方箋はない、

最悪のことが起こる前に私は年老いて死ぬだろうとのことでした。

どうしようもないのだそうです。

わたしの見るところ、彼はうつ病ではありません。

明晰な知性の語る、現実的な、絶望でした。