精神科医は、自分が楽しいときでも、
患者さんが泣いていれば、悲しそうにする。
自分が悲しいときでも、
患者さんがうれしいときには、うれしそうにする。
自分はほとんどなにも食べられないときも、
過食症の人の話を聞く。
他の職業の人も同じようで、
たとえば歌手は、プラーベーとに楽しいときでも、悲しい歌を悲しそうに歌う。
舞台では、プライベートでは女と別れたばかりの俳優が、
ぬくぬくとした幸せを演じる。
悲しい曲がヒットすれば、悲しそうに、でも実はホクホクの気持ちで、歌う。
会計士は、自分が儲かったわけではないのに、顧問先の業績を喜び、
弁護士は、自分は憎んでもいない相手に対して、顧客と一緒に悪口をいう。
看護師は自分が生理前でイライラしているのに、
患者さんには安心の笑顔を提供し、
三越のレジ打ちは、自分では食べないようなものを包んで笑顔で売っている。
セールスマンは時々つらそうな顔をする。
精神科医はそれを見逃さない。