宇津井健

新聞によれば、4月の12日で宇津井健氏の奥様が死去して一年になるという。
そういえばその話が出たのはこんな季節であったか。
わたしは知人から聞いたのだった。
知人はある場所で宇津井健氏を見かけた。そのようすはまさに最愛の妻を亡くした後に、
沈黙の中で必至に自分を支え回復しようとしている人間の姿だったというのである。

新聞記事によれば陶芸やナイフ作りの趣味に没頭するのだという。
この人は、ひとつのことに打ち込むと別のことができなくなるという人ではない様子だ。

それにしても、知人とあの話をしていた頃から、一年がたつのだ。
そのころレストランで写した写真がある。生々しく当時を伝えている。
写真というものは、文章と違い、なんだか客観的なようで、
無責任な感じで提示できるので心易い。

そして、あれからいろいろあった。
いろいろ起こったのは、あの後だったのだ。
私としては多分処理しきれない現実に翻弄されたのだ。
わが子の命日を数えるというのではないが、そんな気持ちだ。
亡き子の歳を数える、そんな私だ。