菊の歌

このごろのしぐれの雨に菊の花散りぞしぬべきあたらその香を

この冷たい雨で散ってしまっただろうな その香りが惜しい

ちりぞしぬべき など ちょっと大変な音の連なり

*****
ぬれて干す山路のきくのつゆのまに いつかちとせを我は経にけむ

菊の露に濡れた衣を干すちょっとの間に
自分は俗界の千年を過ごしてしまったのか

衣をと出さなくても、
濡れて乾く山路の菊のつゆ、たったその間に、千年がたったとしてもいいのだろうかと思う
ここでいう山路は仙宮への道のことらしい。

*****
心あてにおらばやおらむ初霜のをきまどはせる白菊の花 おおしこうちのみつね

初霜の白と菊花の白とが区別がつかないというわけだ

心あてには、あてずっぽうにということ。
当てずっぽうに手折られるのはつらかろう。さだめとしても。

まどはせると言っているがこれも他人のせいにしている。
あなたがあまりに美しかったから私を惑わせたと言っているようだ。
そのように言ってくれるだけ上等だろうか。