Soros on Recursiveness

Soros on Recursiveness

ソロスは昔から哲学者のように哲学を語る人間として知られ、カール ポパーの「開かれた社会」の実践者であるというのも面白いが、日本ではソロスはヘッジファンドの象徴として嫌われ、成金のイカサマ哲学者と扱われてきたように思う。だが、私の印象ではソロスは、真剣に検討されるべきマーケット思想家の一人と思われる。

ソロスは、この本でも「再帰性」の概念を分かりやすく語ろうとしている。「再帰性」とは、主観と客観といった二元論を超える哲学であることは知っていたが、何を意味しているのか不明であった。ソロスのような大規模な投資をすれば相場に影響を与えるのは当然だろうくらいに思っていたが、そういう意味ではないらしい。

本書より引用
「現行の均衡理論パラダイムに慣れきった人に最もわかりにくいのは、ここの部分だ。例えば再帰性の理論に対する批判の多くは、「市場参加者のバイアスのかかった認識が市場価格に影響をおよぼす」という自明の理を私が一生懸命説いているだけというものだった。だが再帰性の理論の核心はそれほど単純なものではないのだ。」

これは、ファンダメンタルズ=客観、市場のバイアス=主観とした場合、市場はファンダメンタルズを反映するというのは幻想だということだ。

実際、再帰性概念は、このファンダメンタルズ=客観という概念を否定している。
つまり、ファンダメンタルズと市場バイアスは、双方向的に操作可能であり、どちらも一方を変更しうるため、主観ー客観というパラダイムでは収まらない。市場バイアスは、ファンダメンタルズを実際に変更するし、逆も真なり。

均衡という概念自体が否定されなければならない。さらに均衡概念を前提とする合理的期待形成をはじめとする経済学理論は全て間違っているという結論になる。投資とは動く標的を追う行為となる。

市場のブームーバストという加速的なポジティブフィードバック過程に対する観察でソロスは自分の理論を証明しようとしているわけだが、それよりも実際にそれで儲けているというのがすごいことである。