雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり

雨が降っているから恋人に会いにゆけない
こころはうつ
山は黄葉

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雨だけど行っちゃうというのがこれ。

わが背子が使ひを待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨の降らくに 

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雨だけど来ちゃった。

纒向の痛足の山に雲居つつ雨は降れども濡れつつぞ来し 

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雨でも逢いたいというのもあり。

心なき雨にもあるか人目守り乏しき妹に今日だに逢はむを

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雨だから今日はゆっくりしよう。

ひさかたの雨も降らぬか雨つつみ君に副ひてこの日くらさむ 

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雨も降っているし紐でもほどこう、となる。ドラマ「ファン・ジニ」でも紐をほどいています。奥ゆかしい言い方。

雨も降り夜も更けにけり今さらに君行かめやも紐解き設けな

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遣らずの雨が降ればなあという趣向もある。

ひさかたの雨はふりしく思う子がやどに今宵は明かしてゆかむ

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いぶせし でまとめるとこんな風。
解説は、恋愛上の欲求不満とある。
まさか。わたしは反対。
うつと性的欲求不満は別。当たり前だ。

今さらに妹に逢はめやと思へかもここだわが胸いぶせくあるらむ     家持 4-611
ひさかたの雨の降る日をただひとり山辺に居ればいぶせかりけり    家持 4-769
隠りのみ居ればいぶせみ慰むと出で立ち聞けば来鳴くひぐらし      家持 8-1479
蘆屋の 菟原處女の・・・虚木綿の 隠りてませば 見てしかと いぶせむ時の
垣ほなす 人の誂ふ時・・・                蟲麻呂歌集 9-1809
九月の時雨の雨の山霧のいぶせきわが胸誰を見ば止まん           10-2263 
水鳥の鴨の住む池の下樋なみいぶせき君を今日見つるかも          11-2720
うたて異に心いぶせし事計りよくせわが背子逢へる時だに           12-2949 
たらちねの母が養う蚕の繭ごもりいぶせくもあるか妹に逢はずして      12-2991 
・・・あら玉の 年の五年 敷妙の 手枕纒かず 紐解かず 丸寝をすれば
いぶせみと 心慰さに なでしこを・・・             家持 18-4113