風のガーデン12/11-2

家族というものはいいものだと
一瞬思う

しかしまた思い返し
これはよその人たちだからうまくいっているのであって
私の場合はだめだと思う
私も私の遺伝子を受け継いだ子どもたちも多分だめだろうと思う
そんな地獄を見るくらいなら
何もなくていい
ただ寒さに耐えればいいだけだから

また一方でゆるんだ理性で思うのは
息子と娘がいたらどんなにいいだろうかということだ
半ば煩わしく半ば楽しい
ずるずると関係しながら約20年を過ごす関係

ある人が言う
うちの子は2歳半
アンパンマンが大好きで
まだ曜日と時間でチャンネルを選ぶ知恵はないけれど
ビデオで何をセットしてくれとか
親に言ったりしている
コマーシャルとか実は覚えているらしくて
見ていると牛とか口走る
すると数秒後に牛が出てきたりして
きちんと記憶しているのが分かる
幼稚園は一応確保してあって
妻は働こうと思えば働けるのだけれど
楽をしたいらしくて子どもと遊んでいる
今日は自分の検診があるというので
子どもを預けて出かけている
いつでも預かってもらえることが
少し気持ちの余裕になっているようだ

聞いていて
このような細かな実質が
生きると言うことの本体なのだと思う

*****
ドラマでは祖父、父、娘、息子の構成になっていて、娘もかなりボーイッシュなタイプであり、
父と息子の関わりが描かれている

父と息子は私にとっては圧倒的に星一徹と星飛雄馬の物語である
二人の間で何が価値があることか、何が善であるかは完全に一致している

祖母も母親も現在は参加していないので
母性を祖父も兼ねている形になる
このことは祖父の存在をますます味わい深いものにしている
厳しさと慈しみを同時に表現している
そのことを緒形拳が演じているのでなおさらに涙が出る

今私は緒形拳と中井貴一の両者に半分ずつくらい同化している
誰の立場になったとしても泣く

女性たちが泣く気持ちはこんなようなものなのだろうか
だとすればたくさん泣いていいと思う

結局泣くしかない状況が待っているとしても
多分行動は変えられないし
やるだけやって泣くしかないのだと思う

女性が多く泣くのはやはり悲しいのだろう
男性が泣かないでいられるのは本質的に社会制度が悲しさから遠ざけてくれているのだと思う

*****
家族の価値とのメッセージでこのようにまとめられて泣いている次第だが
現実の家族はなかなかに難しい地獄である
あなたの家庭が地獄でなかったら
それはあなたの人徳だろう
なんと幸いなことだろう
どれだけ多くの人が家族故に苦しんでいるかと思うと
手放しで家族を礼賛もできない
やはり社会が共同体として困難を分け合っていきたいものだと思う

私なら
家族の価値ではなく
共同体の価値として描きたいと思う

家族はいいものだけれど
しかし家族は腐乱してしまうことがある