歯止めかからぬ鳥インフル






「出現近い?新型インフルエンザ」 出現へ強まる懸念 短期間に世界拡大も 歯止めかからぬ鳥インフル






記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2008年2月22日】



 出現すれば短期間に世界中へ広まり、多数の死者が避けられないとされる新型インフルエンザへの懸念が強まっている。新型へと変異する恐れがある鳥インフルエンザ(H5N1型)の、人への感染に歯止めがかからないためだ。大流行は近いのか。現状や知っておきたい知識を、6つの問いと答えにまとめた。


▽アジアで増える人への感染 「震源地」を世界が注視


 -世界の現状は。


 新型インフルエンザの「震源地」になるのではないか-。鳥インフルエンザ(H5N1型)が猛威を振るうアジアを、世界が注視している。


 世界保健機関(WHO)の20日現在の集計によると、2003年以降、H5N1型への感染で14カ国の228人が死亡。その8割以上がアジアに集中している。医療態勢が不十分な国も多いため、この報告数も「氷山の一角ではないか」との見方が強い。


 特に深刻なのはインドネシア。死者は103人と世界最多で、患者発生に全くブレーキがかからない。鳥インフルエンザで病気になったり、死んだりした鶏との接触が主な感染原因だが、庶民にとって鶏は貴重なタンパク源。政府の予算不足で、病気の鶏を処分しても補償は不十分なため、感染を減らす抜本対策のめどは立たないままだ。


 「鳥から人へ」の感染だけでなく、新型発生に一歩近づく「人から人へ」の感染も、濃厚な接触がある血縁者間に限定されるが、既に数例ある。


 ベトナムやタイでの事例に続き、関係者を「ついに新型発生か」と緊張させたのが06年、インドネシア北スマトラで親類計7人が死亡した集団感染。幸い、患者はそれ以上広がらなかった。中国・南京市でも昨年末に父子間の感染が判明し、日本は一時検疫を強化した。


▽ウイルス遺伝子が変異 感染増えるほど高まる危険


 -新型発生の仕組みは。


 インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)という2種類のタンパク質の組み合わせで「H1N1」から「H16N9」まで、144通りの型がある。自然界ではカモなど水鳥が、病気にならずにこれらのウイルスを保有している。


 こうした鳥のウイルスは鳥の細胞に結合しやすく、通常は人には感染しない。だが鳥ウイルスの遺伝子が突然変異したり、人や豚の体内で人のウイルスと遺伝子を交換したりして、人に感染しやすく変異すると、人の間で爆発的に流行する新型インフルエンザになる。


 20世紀には1918年出現のスペイン風邪(H1N1型)、57年のアジア風邪(H2N2型)、68年の香港風邪(H3N2型)と計3回、新型が大流行した。


 97年に香港で初めて人への感染が確認されたH5N1型は、人から人に効率良く感染する能力はまだない。だがウイルスは非常に変異しやすく、人への感染が増えるほどその危険は高まる。


 既に、人の細胞に結合しやすい変異や、鳥の体温より低い人の体温でも増殖できる変異を持つH5N1型が確認されており、専門家は「徐々に人に感染しやすくなっている」と警戒している。


▽現在は警戒レベル「3」 発生なら短期で大流行


 -出現は近いのか。


 世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザが世界的に大流行するまでの過程を6つの警戒レベル(フェーズ)に分け、それぞれの段階で適切な備えをするよう各国政府に勧告している。


 鳥インフルエンザ(H5N1型)の人への感染が続き、「人から人」の感染も限定的に起きている現在は「フェーズ3」。


 ウイルスが人に感染しやすくなり、人から人への感染が小集団で確認されるようになると「フェーズ4」で、これが新型インフルエンザの発生だ。フェーズの決定は、WHO事務局長が行う。


 世界的大流行は「フェーズ6」だが、発達した航空網での大量輸送が常識となった今日では、新型がひとたび発生すれば、ごく短期間で大流行に至るとの見方が有力。WHOは3カ月以内に世界中に広がるとみている。


▽国内死者は最大約64万人? 不確実な被害想定


 -被害の大きさは。


 政府は、新型インフルエンザの大流行で、国内人口の25%(約3200万人)が病気になり、最大で約64万人が死亡すると推計している。


 大変な数だが、これは新型の致死率がスペイン風邪と同じ2%と仮定して算出した結果。ところが、H5N1型の致死率は現在63%で「これが新型に変われば、致死率2%では済まない」と断言する専門家もいる。


 一方、薬の備蓄や医療体制など政府の新型対策はこの被害想定が根拠になっており、数字が変わると対策に多大な影響が出る。


 政府の推計を大幅に超える試算としては、オーストラリア・ローウィー研究所が2006年に公表した「日本の死者は214万6000人」という数字がある。一方で米ハーバード大などの推計によれば約12万人。条件により大差がある。


 国立感染症研究所が与党の新型対策チームに提出した資料によると、米国は昨年「国民の30%が感染し、致死率は20%」との想定で机上訓練を実施した。感染研はこれを例に「最悪以上の最悪の事態に備える必要がある」と指摘する。チーム座長の川崎二郎元厚生労働相は「どの推計が正しいとは言えないが、死者は(最大64万人ではなく)最低64万人と見るべきなのかもしれない」と話している。


▽備蓄進むが問題も ワクチン、薬の効果未知数


 -ワクチンなど対策は。


 政府が2005年に決定した新型インフルエンザ対策行動計画の柱は、ワクチンと治療薬の備蓄。しかし、いずれも悩ましい問題を抱えている。


 十分な効果が期待できるワクチンは、新型の発生後にしか作れず、製造には半年以上かかる。


 そこで時間稼ぎ策として、アジアの患者から採取したH5N1型ウイルスを基に「プレパンデミックワクチン」を製造。原液の状態で1000万人分を備蓄したほか、もう1000万人分を追加製造中だ。


 これを医療従事者や社会機能の維持に欠かせない人に接種する計画だが、新型の感染予防に有効なのかは未知数。それでも海外にはプレパンデミックワクチンを全国民に接種する計画の国も。「日本でも全国民分確保を」との声もあるが、本格論議はこれからだ。


 治療薬の備蓄は、タミフルが流通在庫や予防投与分も入れて計2800万人分。リレンザは135万人分で、合計しても想定患者数(約3200万人)に満たない。


 薬も新型への効果は不明確なのに加えて、世界保健機関(WHO)は最近、H5N1型の患者治療では投与量を通常の2倍以上に増やす必要があるかもしれないとの見解を示した。新型も同じだとすれば、さらに大量の備蓄が必要になる。


 ワクチンや薬の対応には限界があるとして、専門家があらためて注目しているのが、外出制限などで感染機会を減らす対策。スペイン風邪流行時の米国で、流行初期から積極的に集会などを制限した都市は死者を少なく抑えられた、という経験に基づく。


▽重要な「せきエチケット」 2週間の食料備蓄も


 -家庭での対策は。


 厚生労働省が昨年まとめた個人・家庭向け指針は、新型インフルエンザへの対応は「通常のインフルエンザ対策の延長線上にある」としている。


 ウイルスを広げないために、せきやくしゃみの際はマスクをしたり、ティッシュなどで口と鼻を押さえる「せきエチケット」が重要と強調。感染の危険がある人込みで買い物をしなくて済むよう、食料などを2週間程度分備蓄することや、家庭で新型発生時の対応をあらかじめ話し合っておくことも勧めている。


 備蓄品の例は、米、レトルト食品、飲料水のほか常備薬、マスク、ゴム手袋、ポリ袋など。


 新型の発生が分かったら、不要不急の外出は控える。家庭内でインフルエンザらしい患者が出た場合はマスクをさせ家庭内感染を防ぐ一方、直接医療機関には行かず保健所などに連絡し、指示を受けるよう求めている。


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流行すれば、わたしのような老人から先に死ぬだろう。
社会保険庁は流行を願っているかもしれない。