略奪

1993年11月23日朝、西宮市で将棋の森安秀光九段(当時44歳)が
自宅で死んでいるのを妻のY子さんが発見し、警察に通報しようとしたところ、
長男のA少年(当時12歳)がY子さんを包丁で切りつけてきた。
A少年は「ボクの逃げ場がないんや」と絶叫して、そのまま家を飛び出していったという。
Y子さんは隣の家の女性に、「110番して」と助けを求めた。
 
警察の取り調べに対して、A少年は母を刺したことは認めたものの、
父親に関しては「知らない」と一貫して否認したという。
 
関西にファミコンショップがあり、そこではファミコンを一部店内で無料開放し、
子どもたちに自由に遊ばせていた。A少年もそこで遊んでいたらしい。
「1万円近くするようなソフトを、そう簡単に子どもが買えるわけがないですから。
店に来る8、9割の子は買うことを目的にしていなかった。
だから、店は子どもたちがたむろする場所になっていました」
 「私はそれでも良かった。ただ子どもたちには、冗談半分に、
『日ごろ、ここで遊んでいるんだから、ソフトを買う時はうちで買えよ!』
とだけ言っていました。しかし阪神大震災の時に、
ファミコンソフトの在庫が 600万円相当分あったのに、全部略奪されたんです。
正直ハラが立ちましたね。そして私が今までやってきたことは何だったんだろうと思い、
完全にやる気をなくしました。
だから店を閉める時に、これといった感慨はありませんでした」

このあと、A少年とのエピソードが綴られるのだが、
ファミコンソフト600万円相当分略奪とは驚く。

阪神大震災に関しては、奇跡的に助かったという人の話を聞くことが多い。
生き残った人だけが話せるのだから当たり前だけれど、
中にはこのような、アメリカで起こりそうな略奪もあったらしい。