医療の状況

医療の状況についていろいろなことが言われている。
つぎのような文章を読むと、
「医者-患者」を「親-子」と読み替えて、
「子供のしつけができない」
「少子化社会」
につながるものがあると感じる。

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昔は,医師という専門職に対してある種の畏敬があったような(少なくとも皆そういうふりはしていた)気がします.それに対して滅私奉公する医師も多かったように感じます.ところが現在は,診療契約義務が強調され,期待した結果が得られない場合は,その医師の誠意や努力に関わらず,診療義務違反として訴訟になることが多くなりました.薄給でも「先生ありがとうございました」の一言で報われるものですが,「診療費を払っているのだから当たりまえ」のように考えている方が多くなってきました.契約が主体の医療にあって,医師に高邁な人格を要求することは,あまりに一方的な要求とも思います.また,純粋に経済原理として考えて,診療契約に関わる医師への報酬は,そのリスクに比して少なすぎます.極めてhigh risk low returnで,精神的にも報われない職業であるといえます.日本のように皆が安い費用でこれだけの医療を受けられること自体が世界的な非常識で,それが原因で医療経済が破綻したのは当然の結果といえます.今は,過渡期ではありますが,これからの日本の医療が,アメリカ型になって行くのであればそれは望むところではありますが,イギリスのようになってゆくのであれば医者も患者も不幸です.医者を特権階級にする必要はないと思いますが,少なくとも皆が憧れる職業でなくては良い人材には恵まれないというのは事実ではないでしょうか?私はサラリーマンの息子で,遊んでいる同級生を羨ましく思いながらも,一生懸命勉強して国立大学へ進学しました.親が金持ちでなくても医師という専門職に就くことは可能ですが,いざ蓋を空ければ,羨ましく思っていた同級生の方が銀行や商社,マスコミなどではるかに良い給料をもらっています.医師は,尊敬すべき専門職というより,医療という商品の契約履行者であるというのが時流なのであれば,それはそれでかまわないのですが,物や金を右から左に流して利益を得る職業が憧れの職業になっていて,生命への過大な責任を負いながら職務を遂行する医師が,その職責に相当な契約報酬も与えられず,悪徳特権階級として糾弾されるならば,今後の医療の荒廃は避けられません.子供が「医者になりたい」と言ったら,「止めておきなさい」「もっと努力の報われる職業が他にあるはずだよ」と忠告します.医師に対するいろいろの不満もあるかとは思うのですが,ある一面をclose upして全てを否定するようなnegative campaignをみる時,正当に評価されていない寂しさを感じます.また,そういったご意見をなさる方々に是非,一念発起いただいて医師になってもらいたいと思います.誰もが医師になることは可能です.さすれば崩れゆく日本の医療も少しは持ちこたえるやもしれません.

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昔は親を尊敬していたものだし、
子育ては報われるものであった。
いま、子育てはhigh risk low returnなのかもしれない。

医療現場の荒廃と
少子高齢化は
根が同じなのかもしれない。