ネットの広告市場の可能性

 ネットの広告市場は、そもそも過小評価されていると思います。7000万人という利 用者が接触していて、接触時間もどんどん長くなってきていて、ネットでしか届か ない利用者層も確実に増えてきている。  その中で、新聞って1日5000万部ですよね、ざっくり言うと。その新聞の広告市場 はだいぶ下がっていますけど、ざっくり1兆円あるじゃないですか。それに比べて、 ネットの広告市場は、数え方にもよりますが、5000億円とか6000億円とか言われて いる。それは、まだ少ない。

 もう何年も前なんですけど、大ざっぱな算数をやったことがあって、マス広告市 場は、視聴者数、読者数で割ると1人当たり2万円になるんですよ。5000万部の新聞 は1兆円。1億人が見るテレビは2兆円と。雑誌とラジオも幅があったかもしれないけ ど、大ざっぱには、だいたい1人2万円なんですね。  だから、ネットの利用者数が仮に1億人になれば、おそらく2兆円になるだろうと 。今、7000万人というのが本当であれば、1兆4000億円までは上がってもいいはずな ので、そこまでは何年か分からないですけれど、上がっていくと思います。

  ヤフーは、もはや成熟したマスメディアと言える。ネットオークションの手数料な ど消費者から直接、収入を得る手段と売り物を持っているものの、収入の過半は広 告。昨年9月、検索連動型広告大手のオーバーチュアを連結子会社化し、今年1月に はサイトのリニューアルでニュースを目立たせ、広告枠を拡大するなど、よりメデ ィア企業としての色を鮮明にさせている。

 「マス」をとらえた成熟企業であることは数字が示している。今年7月の携帯電話 も含めたページビュー(PV、閲覧件数)は435億9500万件。もちろん、国内では他を 寄せつけぬ圧倒的な数字であり、世界でもトップクラスであることには違いない。 だが、昨年10月に440億件をマークして以降、右肩上がりの曲線は角度を水平に変え た。  アクセスのあった端末数を示すユニークブラウザ数という指標も、昨年11月に1億 7578万を記録してから安定期に入り、今年7月は1億7271万。パソコンはテレビ並み の普及率となり、既にヤフーの「視聴者数」は限界点に達したという見方もある。

 広告を収入の柱とするメディア企業は、景気後退のあおりを真っ先に食らう。今 年4月からの第1四半期、大手テレビ局の決算は軒並み減収減益。新聞各社や出版社 も苦戦を強いられている。「インターネットだから成長する」という通念は、もは やネットであれ、広告を柱とするメディア企業には通用しない。 ヤフーはインパクトのある広告表現を研究する一方、「ターゲティング広告」の開 発にも余念がない。例えば、「Yahoo!自動車」のページに自動車の広告を掲載する など「掲載面」による広告をはじめ、ユーザーの「年齢・性別・職業」や「地域」 などの属性によっても広告露出を変化させてきた。そして昨年6月、さらに進化した バナー広告の商品を売り出した。ユーザーの行動履歴をもとに広告の内容を変化さ せる「行動ターゲティング広告」の新商品である。

 例えば、「トヨタ」「レクサス」などを頻繁に検索したり、「Yahoo!自動車」で 複数の車種を比較したうえで、「Yahoo!ファイナンス」にてローンの情報を見てい るユーザーを「自動車の購入を検討している」と判断。そうしたユーザーには、ヤ フー内のどのページでも自動車関連の広告を露出するというもの。これに、属性情 報を掛け合わせた広告を開始したのだ。

 ヤフーによると、行動ターゲティング広告はクリックされる頻度が普通の広告の 約2.5倍増え、「自動車の購入を検討している20代男性」など行動ターゲティング広 告に属性を加えた場合は、さらに1.9倍増えるという。行動ターゲティング広告の単 価は一般広告の約2.5倍。行動ターゲティング広告に属性を合わせた広告は、さらに その約1.5倍の単価を設定している。

  一番新しいマスメディアとしてネットは生まれてからまだ12年。次に新しいのって テレビなんですけれど、50年。そうすると、テレビの50年 にいくまで、まだ5倍ある。長い目で、淡々とやっていきま すよ。