その不幸によっておまえは幸福になることもできる

人生はおまえに不幸をもたらすけれど、
その不幸によっておまえは幸福になることもできるし、
人生を祝福することもできるし、
またほかの者たちにも
人生を祝福させることができるだろう
これがいちばんだいじなことだ
『カラマーゾフの兄弟』

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窯変ということがある。不幸を祝福に変換する。
そんなことができたらいいのにと思う一方で、
そのようなことをしない限りは、不幸からは抜けられないのだと知る。
一時の気晴らしで忘れてしのいでいたとしても、限りがある。
朝、目覚めの床で直面するのはやはりこの現実である。
だから朝の目覚めが一番つらい。

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その不幸によっておまえは幸福になることもできる
といわれれば
そこにこそ信仰の神秘があると誰でも思う

しかしドストエフスキーにしても、
真の信仰に到達して安らかに人生を生きたとも思わない

いつも原稿の締め切りを気にして
借金もして
やっとの事で生きた人生

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確かに神学の本には
その不幸によっておまえは幸福になることもできる
とも書いてある
しかしそれは単に、そのような文章を思いついただけなのだという可能性もないではない。

単に信者をうっとりさせる言葉を集めていただけなのかもしれない。
バチカンは真に偉大な知性であるが、同時に実に人間的でもある。