開業医、夜間・休日診療優遇へ やめた方がいいな多分

記事を引用して、下線を引いた。
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開業医、夜間・休日診療優遇へ 初・再診は下げ 診療報酬改定、厚労省方針

記事:毎日新聞社
【2007年3月22日】診療報酬改定:開業医、夜間・休日診療優遇へ 初・再診は下げ—-厚労省方針 厚生労働省は21日、勤務医の負担軽減策として、開業医の診療報酬については、外来患者を時間外に診療した場合の加算を手厚くする代わりに初・再診料を引き下げ、夜間や休日に診療をしないと高収益を望めない体系に改める方針を固めた。現在、患者は大病院に集中し、多くの病院勤務医が疲弊して開業医に転じるため、勤務医不足が深刻化している中、地域の診療所の夜間診療を促進し、現状を改善するのが狙い。08年度の診療報酬改定で実現させる考えだ。【吉田啓志】 ◇大病院集中を改善 政府は06年度改定で、初診料については診療所(ベッド数19床以下)を引き下げる一方、病院(同20床以上)は引き上げ、双方270点(1点10円)に統一した。また、24時間往診可能な診療所を「在宅療養支援診療所」とし、報酬を手厚くした。時間外診療における開業医の役割を高め、病院との役割分担・連携を強化することが、導入の狙いだった。 しかし、同診療所は医師らの負担が重く、届け出数は約9300カ所と全診療所の1割にとどまっている。再診料は病院57点に対し診療所71点と高く、厚労省は「依然開業医は夜働かなくとも高収益となる報酬体系になっている」(幹部)ことも、診療所の夜間開業が広まらない原因とみている。 そこで厚労省は08年度の診療報酬改定で、診療所の初・再診料を引き下げて財源を生み出し、夜間など時間外加算を充実させることにした。平日の初診で午後10時までの診療に85点を加算するなどしている現行報酬を大幅にアップする代わり、再診料を中心にカットする意向だ。収入面で後押しし、開業医に夜間診療をしてもらうことで、患者が大病院の救急病棟に詰めかける現状を改める考え。その一方で、ビルにテナントで入り、定時診療しかしない「サラリーマン開業医」の収入を抑える狙いもある。 診療報酬の具体的な増減幅は今秋、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論する。ただ、日本医師会などは慎重審議を求めるとみられ、初・再診料を巡る議論は難航する可能性もある。

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そんなことを言われてもね。役人は、ポジションがどんどん替わりますから、長期的な責任は取らない。とりあえず今突きつけられている課題を根回しして調整すればそれでいいと考えているようだ。

根本的な解決は、とりあえず、勤務医部長クラスの社会的待遇を、銀行支店長クラスよりもましなものにすることだと思う。
それをしないで、開業医の収入を下げたらいいと思うのは間違い。
数字で出ている開業医の収入というのは、実は、診療報酬というもので、
開業医はそこから、人件費や家賃、諸費用を負担する。税金を支払って、
残るのは、銀行の支店長よりも少ないというのが、一般的な見方だ。
美容整形のように保険外診療を多くしたり、眼科コンタクト外来のように数をこなしたりする以外に、収入を上げる方法はない。

財政担当者は、財政との関係で、命を縮めるしかないのだと白状すればいい。

今時の患者さんは目が肥えていて、ゆっくり細かく診療してくれない医者は見限られる。ゆっくり細かく診療すると言うことは、時間あたりの収入が少ないということだ。診療全時間を伸ばすしかないのだが、当然、燃え尽きる。産婦人科、小児科と、すでに燃え尽きた科目が知られている。

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夜間診療や休日診療には、職員の確保が難しくなりつつある現状があります。7対1看護のこともあり、看護士は圧倒的に大病院に囲い込まれています。そんな中で、夜間・休日に張り切って勤務してくれる看護し、事務員さんがどれだけいるというのでしょう。
「サラリーマン開業医の収入を下げる」なんて言っていますが、その人たちは、都会のサラリーマンをターゲットにした開業なので、夜間や休日に開院していても、患者さんは来ません。しかも、夜間・休日の救急に準じた患者さんには相当な設備が必要なことも多い。緊急検査なんかが必要なわけです。田舎の開業医にそれはできない。
ベッドタウンの開業医さんは多分一時的には、社会の要請に応えて、夜間・休日をまじめにこなすでしょうが、土台、その時間帯は患者数が少ないのですから、そのうちやる気がなくなります。報われないし、そんな時間に押しかける患者さんは扱いが困難な例も多いのです。待合室が荒れてきます。緊急に来たのにいつまで待たせるんだ!などと、いままで基幹病院夜間外来で聞こえていた怒鳴り声が小さな診療所で聞こえるでしょうか。しかしそれも短期間です、すぐに学習して、医者はそんな患者さんを受けなくなりますし、患者さんはやはり検査設備の整った病院に行くはずです。怒鳴って有効なのは公立病院だけですから。

結果は、昼間の診療の値下げが起こるだけです。これまで何度も診療報酬は下げられてきたわけですが、何が起こっているでしょうか?時間をかけないで数だけこなす診療です。看護士さんも事務員さんも働きやすい時間帯に、なるべく集中して数をこなす。多分も今回もそうなるでしょう。
「開業しても儲からないみたいだからこのまま勤務医でいよう」なんて、
誰も思わないはずです。
まじめな勤務医は全然楽ではないでしょう。不真面目な勤務医はどうか知りませんが。
夜間・休日は続けられないです。第一、友達がいなくなります。子供と話す時間がない。そして職員さんも、こう言っては何ですが、家族も友達のいないような人しか、土日は引き受けてくれないんです。

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たとえば夜間に来た患者さんに関して、緊急検査が必要になります。ビル開業診療所では、血液検査さえ外注しているのですから、ほとんどなにもできないのです。たとえば意識混濁があったとして、薬なのか、血糖異常なのか、脳血管障害なのか、電解質異常なのか、現代医学の水準で要求されることを、開業医院でできるわけはないのです。そこをなんとかできないかというので、昔風の、検査に頼らない医学も見直されているのですが、そんな名人技は危ないばかりで評価されません。

たとえばですが、血液迅速検査とMRI迅速検査ができる、基幹病院に、地域医師を、夜間と休日にかなり高額で招くのは方法かもしれません。
あるいは、保険財政が苦しいなら、夜間休日は自費にしてもいいかもしれません。
診療所はコンビニではないのですから、24時間待機していろなんて、とても無理な話です。
救急車がたらい回しされてしまう現状の延長が見える気がします。

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医者の全体数が増えているのに、医者が足りないと言われる最近の危機感は何でしょう。
医者が多くなれば、医者も、いやな仕事も安く引き受けるだろうという計算がそもそも違ったのです。
良心的な医者は現実に落胆し活動を狭めてしまいます。そうでない医者は、患者のレベルに見合った医療を提供しています。どこにも理想なんかないわけです。
責任の重さに応じた待遇がないのですから、長続きしません。

子供も医者にして医院を継がせたいなら、やめることはできません。
しかし自分の代で医者はやめていいと考えているなら、
そもそも優秀な人たちですから、他の仕事だってできるわけです。
奥さん方が何かの資格を持っていることも多いので、それを援助したっていいのです。
親や兄弟が事業をしている人たちだって多いですから、そこに名前を連ねてもいい。
日本という国の特徴かもしれませんが、不動産経営をしたほうが、医者より儲かるのです。そうした資産を持つ人たちはさっさとやめます。
やめないのはどんな医者か、引き算すれば分かりますよね。
この引き算がどんどん進行するのです。
病院に行くこと自体が命取りになりかねません。
個人的に、いい医者を知り合いにもっておくことが必要になるかもしれません。
病院に行ってもいい医者はいなくなるのですから。

まあ、それは極端としても、
いま医療が何とか持ちこたえているのは、卒業したての若い人たちが、それでも理想を求めているからです。すぐに燃え尽きるのですが、新人は毎年いますし、いまでも医学部は人気ですから、そんな人たちが支えているわけです。

ある人の意見では、最近の医者の責任の取り方が変わってきたと言います。
そもそも新人が責任なんかとれるわけがないわけで、
昔は現場で何か起こっても、それについては院長が責任を取っていたわけです。そのようにして新人は経験を積んでいく。
しかし最近は、先端医療の分野でどんどん技術は先端化している、つまり、どの先輩も経験したことがない場面で、新人もそれなりに考えながらトライしないといけない。当然予期しないことも起こるわけで、そのことについて上司が責任を取らなくなってしまった。当たり前のように執刀医が裁判で責められる。まあ、裁判は乗りきったとしても、当人はもう懲りてしまうし、その苦労を見ている周囲も、萎縮してしまう。すると良識のある人たちはトライする気がなくなる。そんな中であえてトライするのは、どんな人たちなのか、それも、引き算してみると分かる。

夜中なのでまた明日推敲するが、とりあえずそんなことを、外野席で感じている次第である。
サラリーマンも大変だけれど、命を預かるお医者さんも受難の時代だと気の毒である。

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「検査費用を安くあげてしかも安い薬ですませるガイドライン」でも作りますか、厚労省。
勤務医は特に働きすぎではない、ただぼうっと待っているだけでそれは仕事の時間ではない、と暴言を吐いたあの柳沢大臣の任期中に。

われわれは何のために働いて何のために医療保険料を支払っているんでしょう。
最近の、テレビで大量に流れている民間医療保険のコマーシャルが気になります。なんでもアメリカ並みにということで、流されて行くのでしょう。誰が儲けているのか、よく見る必要があります。

既得権益にメスを入れろと言うわけで、貧乏な人がますます医者にかかりにくくするでしょう。
結構、愚政は今に始まったことではありません。常にそうでした。そしてまれに賢政があるだけでした。
国民がそれを欲し、選択しているのだとしか言いようがありません。

お医者さんは、ハワイなんかで開業するのもいいかもしれませんね。
老齢日本はこの先だめなんだと思います。