薬剤のターゲット

薬剤が何をターゲットにしているかというのも、
場合によりさまざまである。

例えば、高血圧の薬でも、
単に血圧を下げるというだけではなく、
心拍数を下げたり、
末梢血管を拡張させたり、
心臓保護作用を期待したり、
腎臓系に働いたり、
レニン・アンギオテンシン系に働いたり、
何をターゲットにしているかで、
かなり意味合いが違ってくる。

精神科の薬はそれ以上に、
何をターゲットとするで治療が違ってくる。
一番分かりやすいのは、
いま現在前景にある症状をターゲットとするもの。
これはうつ状態とか、衝動性とか、たくさん食べてしまうとかとか、そんなもの。
すこし難しいのは、その奥にある疾病の構造をターゲットとするもの。
躁うつ病の構造など。
さらにはその奥にある、性格構造に対しての薬効を期待したり、
また別の場合には、遺伝的傾向に対しての、予防効果を狙ったりもする。

死なないでいてもらうために、
あるいは、先々の病状を安定させるために、
一見意図の分かりにくい処方をすることもある。
それはきちんと説明すれば分かることだから、
理解・納得して、飲んでほしい。

検査をして病気が決定、
薬もそれで決定、
というような世界ではない。

将来は、遺伝子タイプにより、病気と、適切な薬剤がアウトプットされ、
それに従うということになるのかもしれない。
体質の根本部分にはそれで対応して、
心理的な部分には、人間が言葉で対応するということになるのだろう。