西行の心すむ

仏教での悟りに至り、
それを生活に反映させるために、
草庵での安らかな定住を理想とする。
そのことを一語で表す言葉が、
「心すむ」であるという。
ちょうど清らかな水に月影が映るようにして静かに庵で暮らす生活を
送りたいと願いながら、西行は旅を続けた。
「心すむ」は彼の理想の要約であった。

まことにそのようでありたいものだ。
明鏡止水
方丈の庵
粗食で
親朋一字なく
ただ古典文のみが友人である
そのうち老病が訪れる
それを待つのが人生である

心を澄ませるには
親類も友人も遠ざける必要がある
孤独が心を澄ませる

だから旅がいい

しかしまた、隠遁生活をしたとしても、
人生の苦悩も生活の逼迫も草庵に迫る。
そこを窓口として現実生活との最小限の妥協を探す。
それさえ片付けておけば、あとは仏典なり漢籍なり、
古典作品の中で自由に遊ぶことができる。
これほどの幸せがあるだろうか。
他には考えられないほどの幸せである。

2007-01-14