わたしも捨てられないの

私も物が捨てられないのよ
これって、病気なの?
薬で治るわけ?
驚いた。

もう、みんなに言われるの。
捨てろ、整理しろって。
それを入れとく一部屋に月いくらかかってるかって。

お洋服だって捨てられないし、
本も、メールも、たまる一方なのよ。
写真もそうだし手紙ももうずーっととってある。

見返すわけじゃないんだけど、
いつかなんかの役に立つかなって思うと、捨てられないの。

ハードディスクの整理?
雑誌の特集で見たことある。
でもやらないよ。わかんなくなるもん。

そうよね、捨てられないわ、やっぱり。
大切な自分なの人生なんだもの。
あたしにとって大切なのはやっぱりこのこまごました具体的なものと思い出なんだ。
この具体的な貝殻とか砂とかに、
大切な何かが書きこまれているって思う。
だってこれが本当の本物なのよ。
そのときのあたしの電磁波がしみこんでいるんだわ。

私がいなくなっても、その電磁波は残るのよ。
いつか誰かが、その電磁波を合成すれば、私の過去が立ち上がるのよ。
そのためにも、あたしは、少しでも素敵に生きたいと思うのね。
選択肢がある限り、素敵な方を選ぶ。
選択肢を拡大できないか、いつも考えている。
だってすべては記録されているんだもの。
そうなんでしょう?

町を歩くって、選択肢を広げるのに結構役立つと思う。

ああ、ポール・スチュアートのワンピースね、
歴代のが何着かあるわ。
あれだって捨てられないの。
体型は変わってないからまだ着られる。
それどころかだんだんやせちゃって。
やつれちゃったの。
それはそうとして
着るチャンスがないんだわ。

仕事ばっかりだし
仕事してないときは砂漠とか南極とか、なんかこう、極端なとこに旅行だし。