フリードマンバッシング

今はミルトン フリードマンに対するバッシングも相当なものである。
経済の調子が良かったときは、さんざん持ち上げておいて、悪くなると責任をおっかぶせるというのは、大衆の卑しさである。
とはいえ、実は、フリードマンに最も批判的だったのは、何もわかってない左派ではなく、むしろMises-Rothbardを戴くオーストリアンだったのも事実だ。

ミーゼスは、「定期的に経済危機が起こることは、銀行政策により繰り返されるマーケットの自然利子率を下げようという試みの必然的な結果である。
経済危機はこのような呼び水政策をやめることをしない限り無くなることはない。なぜなら、人工的に刺激されたブームは不可避的に危機と恐慌へと行き着くからである。
危機に対応して現れる介入主義者の政策の試みの全ては完全に見当違いのものである。」
と、レッセーフェールを唱えているように、フリードマンのマネーサプライ論もオーストリアンは否定する。そういった企ては全て政府の計画主義的市場介入だとする。
そして、現在の金融危機も、グリーンスパンの今までの自然利子率をコントロールしようとした金融政策の誤りの結果だったと主張しているわけだ。

政治的自由や市民的自由といった概念は何を意味しているのか定かでないが、リバタリアン的には政府から与えられる自由など自由とは考えない。「政治的自由は、状況によってが経済や市民の自由を促すが、状況によっては拒むこともある。」とあるように、フリードマンも政治的自由なるものを否定的に考えている。実際、アメリカのconstitutionalismとは(連邦)政府が自由に何でも立法できないようにしている制限憲法だという点が本質的なのだ。

また国有化と社会主義化とは、曖昧だが、前に書いたように、国有化も方法を間違えれば社会主義と変わらないだろうが、資本を注入する行為だけを見ればそれは市場ルールを大きく否定するものでもないので、あまりこの言葉にとらわれない方がいいと思う。

ところで、ジムロジャースは今の大暴落は、オバマ民主党が保護主義を主張していることを織り込んだ動きだと指摘している。だから、オバマが今すぐにでもなすべきことは、この保護主義的主張を明確に撤回すると公言することだ。
Smooth-Hawley Tariff Actは、その案が議会に提出された時点で、大暴落を引き起こした。
当時も経済学者はこの案に大反対の声明をだしたのだが、市場はこのように政治を取り込むものと考えられているのである。
逆にオバマが保護主義を撤回すれば、市場はそれを折り込んで大反発するだろう。これは今考えられるいかなる政策よりもインパクトがあるはずだ。

決して間違ってはならないのは、市場が愚かな大衆心理で動いていると思い上がった勘違いをすることだ。
これは自称経済学者なる連中に多く見られる、Fatal Conceipt(致命的なうぬぼれ)である。
私の知る限り、偉大な投資家は決してそういう考えはしないし、その正反対の考え、つまり市場に対する畏怖を持っているように思われる。