堀田善衞「ゴヤ」10

〈引用〉生まな情熱ーー憤怒と憎悪は、芸術の生成にとってもっとも厄介なモティーフであり、人がそれに駆られて画布に、あるいは原稿用紙に向かった場合、成功する率は、ほとんど無であるのが常態であろう。
●そうかもしれない。

●実にゴヤは勤勉である。常に描き続けている。描くこと、観察すること、発見することが本能であるかのようである。しかし考えてみれば、人生はそのようであるべきである。自分を鍛えてゆくしかないだろう。

〈引用〉ミシェル・フーコー「狂気の歴史」
●やはり大切な本らしい。今度読もう。

〈引用〉無機質の工業製品によって、つまりは顔のない暴力装置によって大量の人間が一度にまとめて殺される時代が到来する。われわれはゴヤによって、その時代の開始期に立ち会わされている。
●まことに、暴力的破壊装置と、移動装置は、人間の限界というか適性を超えて発達してしまった。そしていま現在は通信手段が人間の脳の限界を超えて発達しつつある。誰にとっても幸せではない事態。

〈引用〉人間のやらかす一切の所業に耐える。現実としてのみの怪獣をあえて描き出す。
●怪獣、といえばそうかもしれない。多分、そうだ。人間同士だから、相手の気持ちを推し量る。やってはいけないはずだと考えていることを敢えてやってしまう。そんなものなのだろう。しかしそこで気持ちが折れてはいけない。あくまでも毅然と立ち続けよう。相手は怪獣でも、自分まで怪獣になっていいはずはないのだ。