心の涙

Y先生は奥さんが亡くなったとき、
じっとじっとマタイ受難曲を聞いている時間が多かった。
15年位前になるだろうか。

そのY先生の編集したカセットテープが段ボール箱に一杯届いた。
わたしにとって、これはただの物体ではない。

思いを込めて編集した人間がいて、
それをくり返し聞いた人間がいて、
そしてわたしに届いたのだ。

わたしもかなり影響されてしまい、
悲観的になっているのだけれど、
こんなときにはもっともっと悲観的になって、
心の涙を流したい。