資生堂パーラー

恋愛至上主義者は
あっさりと現実に屈し
主義を捨て
資生堂パーラーでランチを食べる
ハヤシライス
やはり見事な味である
値段は安くないのだが
たまに食べたくなる
年寄りの舌に合う

煉瓦亭のハヤシライスも見事
今はなき三越本店大衆食堂のハヤシライスはさらに見事

何が違うのだろう
丸善本店のハヤシライスはそんなに好きではない

年配の一流職員に給仕され
カモミールティーを飲み
ランチを終わる
グリーンティーのようにくっきりとしたいい色だった

春の孤独はいいものだ

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今はなき三越本店大衆食堂のハヤシライスは
もう食べられないので年寄りの自慢話のようなものだ
椎茸の刻んだものが入っていたり
ごった煮のようでもあり
よく分からないものだったと思う
その時代を生きてその時代の舌になっただけなのだろう
若い頃はやった流行歌が好きなようなものだろう
いまどきの人たちはもっと別な深い味覚を持っているのではないだろうかと思う