医療コンサルティング会社破産、病院連鎖倒産

竹中郁夫氏の文章を収録。

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新進医療コンサル会社の蹉跌、そして病院が連鎖倒産…
 3月19日、ある医療コンサルティング会社が東京地方裁判所に自己破産を申し立て、破産手続き開始決定を受けました。

 この医療コンサルティング会社は、この日経メディカル オンラインでも 「話題の会社『アスクレピオス』とは?」の記事で紹介されているように、かねて注目を浴びる企業でした。

 ギリシャ神話に登場する医聖の名を冠したこの医療コンサルティング会社は、2004年9月に設立されました。クライアントの医療機関に対して、事業企画運営、融資斡旋、医療機器設備のリース、人材派遣など総合医療経営コンサルティング業務を行うとともに、大手商社などとも取り引きを行い業務拡大を図り、07年3月期には約50億9300万円の売り上げを計上していました。

 07年9月には、株式交換により、著名な医学者でもある水島裕氏が代表を務めていた株式会社LTTバイオファーマ(東証マザーズ上場)により完全子会社化され、このところは投資事業や事業再生事業に特に力を入れていたようです。

 ところが、親会社のLTTバイオファーマがインフォメーションしたところによると、このアスクレピオスが不正な取引を行っていた疑いのあることが発覚しました。3月19日に同社を営業者とする匿名組合契約に基づく出資金の投資家への償還が資金不足のため不能となって、債務超過状態に陥っていることが判明。冒頭にお話したように破産手続き開始決定を受けることとなってしまいました。

 ところで、これまで新聞各紙が報道しているところによると、この倒産劇には次のような詐欺臭い事件があったことが分かっています。

 アスクレピオスは、大手総合商社の丸紅と共同で医療機関の再生事業を行っていると投資家に説明し、総額数百億円の出資を募っていました。ところが、300億円余りを出資したある投資家が3月になって配当の支払いが滞ったので問い合わせたところ、どうも共同事業自体が架空のようだということが発覚しました。

投資家を募る過程で丸紅名義の稟議書や保証書が偽造され、実際に丸紅の病院再生事業などを行うライフケアビジネス部の嘱託職員(後に懲戒解雇)が勧誘の席に同席するなど、まるで映画「スティング」の詐欺シーンのようです。丸紅は警察に自らを被害者として相談しているということですが、米国の大手証券会社のリーマン・ブラザーズは3月31日、丸紅に対し出資金返還を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしています。

 民事にせよ刑事にせよ、このような魑魅魍魎の事態は最終的に司法手続きによって解明されるほかありませんが、さらに、アスクレピオスの解任された前社長が破産申請直前に親会社LTTバイオファーマの株を大量に売却し、インサイダー取引の疑いも調査されつつあります。

 親会社子会社といっても、LTTバイオファーマが07年9月に株式交換でアスクレピオスを完全子会社化する際に、この前社長はLTTバイオファーマの筆頭株主となり、今年1月まで副会長を務めています。こういうことを考慮すると、実質的にはどちらが親亀か子亀か?という話です。何にせよ「子亀こけたら親亀大変」という風な危機であることは間違いないでしょう。

 医療崩壊が叫ばれるこの時代、医療コンサルティング、病院再生事業、医療ベンチャーも真っ当にやるには大変な時代と見るべきでしょうか?

 帝国データバンクによれば、4月7日には、このアスクレピオスの倒産により、今川病院を経営する医療法人鋠生会(大阪府八尾市)が大阪地裁に自己破産を申請しました。鋠生会は、不動産や診療報酬を担保に同社から資金支援を受けており、同社の自己破産により資金繰りがつかなくなりました。いわゆる連鎖倒産です。
 このように、まともなコンサルタントに上手に助けてもらえないと、医療機関も連鎖倒産しかねません。今回の事件を今のご時勢を象徴する事件ととらえつつ、今後の事件報道や関係訴訟を見つめていきたいと考えています。

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公立病院だけではなくどこも資金繰りが悪くなっている様子。
銀行には公的資金をつぎ込んでも、病院にはお金を使わないらしい。
「クライアントの医療機関に対して、事業企画運営、融資斡旋、医療機器設備のリース、人材派遣など総合医療経営コンサルティング業務を行う」と紹介されていて、
医者相手なら儲かるだろうと思っているところがあったのだろう。
実際は医療労働者はみんな疲れ果てていて、一体どうすれば現状を改善できるのか、
答えが見つかっていない。

介護も同じ。これからは介護は儲かる「はず」で参入して、
あまりの現実にたじろいでいるところだろう。

厚労省は、需要に見合った供給を考えるのではなく、
供給の現状に見合った需要に抑制しようとしているようで、
後期高齢者の年金から天引きしたうえで1割負担にした。
高齢化社会、超高齢化社会にあたって、人が人を癒し介護するという姿を描けないらしい。
丈夫な人は自分で長生きしなさいということのようだ。

需要を抑制するといえばなんとなく通る言い方だけれど、
実際に起こることは悲惨なことだ。