あなたでなければならなかった

年ごとのゴールデンウィークに思い出すのは
あなたと出逢ったことだ

わたしの中でまるで連続ドラマみたいに収納されている
再生するときには背景に音楽さえ流れている
くっきりとせりふを覚えている
そのときの瞳の表情を覚えている
おどろいたあなたがあげた声を覚えている

誰にも迷惑にはならないから
こっそりア・マポーラなど流している

心理分析の解説までつけることができる
喫茶店の席で陽を浴びて
雑踏を前にして独り想うのはそんなことだ

あなたと出逢い
そのことを分析し
それだけがわたしの人生だったようだ

その他のことはその他の人でも間に合ったと思う
誰かがやっただろう

あなたと出逢うのは
わたしでなければならなかったと信じている
わたしにとってはあなたでなければならなかったと証言できる

無限に憧れをかきたてる唯一の存在

そんなことはあなたにとっては
迷惑なことなのだろうと
過剰なことなのだろうと知りつつ
いまも変わらず憧れる

手を触れたこともない
唇に触れたこともない
恋である