ブランドの心理学

たった一度で
見事に治ってしまう治療というものが存在する

そのような状況が生じるには条件があって、
クライエントの側で、あと一歩まで、問題が整理されていること、
そのあと一歩を後押しするために、ブランド力が必要であること、
薬剤や治療法の効果に加えて、
治療者個人のオーラも必要なこと、
このあたりが複合して、幸福な瞬間は訪れるらしい。

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たった一度で治った人がたった一度で元に戻ってしまう可能性もあるが、
その後の報告を受けていないので分からない。

西洋薬でしばらくやってきて、
漢方薬を加えて見事に効くという症例も少なからずある。
西洋薬であと一歩まで治っていたのかもしれないし、
西洋薬ではあと一歩足りなかったのかもしれないし、
薬剤の要因ではないのかもしれない。
このあたりの厳密な考証は難しい。
従って、再現も難しい。

再現性のない事象について科学的とはいいがたい。
治療者が違っても、再現性があること。
普遍的であること、たとえばインドでも南アフリカでも効くこと。
抗癌剤はそんなものだ。

しかし心理的な事象については
そのような単純な再現性は難しい。
科学として未熟なのか、
科学になじまないのか、
意見が分かれる。

何が起こっているのか、検定に引っかからないらしい。

エビデンスとしてはつかまえきれず、
しかし、印象は強いので記憶に残るらしい。

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全く逆に、
たった一度で見事に悪くなる場合もあるようで、
これは一か月分の反省をしてみると
なんとなく分かる。

決定的に嫌われた場合は二度と来ないのだろうから、
印象に残らないことになるのだろう。

しかし統計的数字としては残る。
追跡はしていないが、こちらのほうがエビデンスとして捕まえられそうだ。
阻害要因は何であったか。

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科学としての要件が何であれ、
治ればそれが一番大切なことだ。

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一所懸命働いたお金をカルティエにつぎ込んでいることを考えると、
ブランド効果は確実にあるのだと考えざるを得ない。

心理療法は、そのような癖のある心理を扱うという
二重の自己参照をしているようで、
ややこしい。