朝方の夢

ヘビーな夢を見て
グロッキー

目が覚めて
しばらく横になっていて
心を整える

トラウマのあとの
精神療法みたいな時間

夢を高速でめくり返し
意味をつけて心の引き出しにしまいこむ

なるほどな なんて思いつつ

夢が重かった分
少しだけ
浄化されたような気分になる

映画の中で時間を行きつ戻りつしているような
もどかしい感じですべてが存在している

などと書いたばかりだけれど
そんな懐かしいものではなくて
とってもグロテスクなリアリズム

体長80センチのワニの首の辺りをスパッと切って、
その頭のほうを手に持って
夢は始まる

登場する物質はどれも重くて
光はささず
解剖の標本のように時間が止まっていて
30年の月日が
バラバラに分解されて
編集しなおされたような
全体に検体を固定する薬剤の匂いが満ちている

あのにおいに満たされていた当時の私の脳は
たぶんすこし固定されているのだ
解剖標本的な意味で
ホルマリン漬けといえば一般には分かりやすいだろう
ホルマリン自体は現在は使わないのだがその代わりの液体である
呼吸している間に体内に取り込んで
あちこちで固定が進んだのかもしれないのだ

それはいいとして
夢は進行する
いまこうして改正した意識でイメージをシャッフルすると
自分が優位に立ってコントロールしていると感じられる
しかし夢を見ているその時間には
次々と意外な光景が現れその意味に圧倒され翻弄されていたような気がする

古典落語なんかを楽しんで
だらだら過ごしたあとで
こんな夢が待っているなんて
ひどい

考えてみれば
今も苦しいけれど
昔も苦しかった
人生は一貫してそうだった
それだけのことだ
夢だって一貫して苦しいものになるはずだ
それでいい

いまさら何も期待しない

でもまあ、こんなこともある
気にしないでいこう