老いの観察

暑熱の日々の中
急にやってきた涼しい夜
今夜は蝉も鳴かない

私は年老いた
身体には白い毛ばかりである

私が小さかった頃のひいおばあちゃんのように

回想は悔恨である
自分が自分の人生を無為にしたのなら自分のせいだ
自分が他人の人生を
また他人が自分の人生を無為にした事を
悔恨と共に回想するのである

人間の嫉妬については
いかんともしがたく
そうした方面に不案内だった私には
まったく対策もなかった

多くは各人の空想した対象について嫉妬しているのであり
それについて対処するのは
通常の人間関係ではない

各人が対象について空想し
さらにその対象についての相手の心中を察するのであるから
各人の心の断定力がものをいう

自分は正しいと言い張る人ほど手に負えない

しかしそこまで考えて
そう考えている私は
自分は正しいと今暫定的に考えているのであって
これこそ自分は正しいと言い張る愚かな人間なのである

そう思ってみれば
もはや私個人はこの世での参加者としては戸籍末梢でもかまわないと思う
あとはただ観察して記録する

身辺に何が起こり何が起こらず
物事の内的関連はいかなるものであったか
知る限りで記す

記すことに誤りもあるだろうが
誤りの傾向についてまた誰かが
考えてくれるかもしれない
だとすれば無駄でもない