眠れぬままに出かける朝

眠れぬままに出かける朝
現実はにがにがし

涼しいとはいえ八月
大学院生室で寝泊りしていた頃を思い出す八月

ひと駅ふた駅が過ぎて
急にすいてしまう電車
変化にもろくなっている自分を感じる

大きなうちわをもらう
あおいで見るといい風
もっと早く配ればいいのに

早く出てしまったので
枕もとの目覚ましを切っていない
いま頃鳴っているはず
そして夜の同じ時間にまた鳴っているはず
何分鳴るのだろうか
むなしく過ぎる
私の人生のまま

あの目覚ましは
秒針の音がしないからいいと
あなたの用意してくれたもの

会社はすぐにでも辞めてやるつもり
定期は一ヶ月ずつしか買わない
漂泊の旅に出て芭蕉になるつもり

芸人さんが芸人さんの格好で通勤している朝
スカートだけサンパの衣装

眠れぬままに出かける朝
会社で思い切り寝ようと思っている朝