自己愛はいつかは妥協する

自己愛性性格者がどこで現実を受容するかは
なかなか難しい。
才能があれば、突き進めばいいし、現実の方が折れる。
才能がなければどこかで妥協するのだが、
どこで妥協するかである。
がんばり屋さんはなかなか妥協しないので、
妥協するときに骨が折れる。

早い段階から小刻みに妥協していれば楽なのだけれど、
それは敗北主義的であるし、
しかしだからといって頑張ってきた人生は、退却が難しい。

そこのところを家族の価値とかそういったものに置き換えて
心をなだめることができれば
ずいぶんと楽になる。

風のガーデンは、自己愛的な生き方を押し通して来た主人公が、
肉体的に死に際して、どう転回したかの物語だ。

本来主人公はあの場面で深い絶望に墜ちて
うつ状態に悩むところだ。

ほんとうは医者という仕事は
パーソナルな結びつきが非常に強い仕事なので
個人としての死を迎えたときにも
むしろ納得できる要素が多いようではあるのだが。
拡大された家族とでもいうべきものが形成されると思う。