堀田善衞「ゴヤ」(6)

・読んでいて、著者は本当によく勉強したものだと思う。読むだけでも結構大変だから、書くのは難儀だっただろうと思う。
 なるほど肖像画が一枚あれば、それにまつわる人物紹介と歴史を語ることができるわけで、そのようにして書かれた文章も沢山ある。それらをスペイン語やフランス語で読みつつ、それぞれの文章の偏り方をも判定しつつ、解きほぐしていくわけだ。堀田氏独自の強い主張というものはあまりないように思う。多分、まじめに大量の資料を読み込んだ上でのレポートと思われ、読むのも大変なのだから、書くのはさぞかし骨が折れたことだろうと思う。
 学術論文で言えば、オリジナルレポートというよりは、総論のようなものだろうと思う。とりあえずの見取り図を手に入れるにはちょうどよいはずであるが、それすら、予備知識がないとなかなか大変である。