逢ふまでの思ひはことの数ならで別れぞ恋のはじめなりける 寂蓮

女、送る。

あなたと実際に愛を交わすまでの思いは
淡いあこがれでしかありませんでした
別れが本当の恋の始まりでした
あのときは
少しの間だけ慰めてもらえばいいと思っていたのです
でももう忘れられません
別れるなんてできません
あなたの温かさも
あなたの思いがけない激しさも
忘れられません
お願いです
もう一度だけ逢ってください

男、返す。

お前がこれほどの女とは思わなかった
わたしこそお前と別れられない
わたしこそお前を忘れられない
いますべてを捨てて惜しくない
これが恋か
年甲斐もなく
心も体もお前を求めているのだ