ビフォー・サイレント・イヴ

アルビーノの肌は白く透けて、
手の甲の静脈さえ、限りなくなまめかしい。
彼女が机でなにか書き物をしているとき、
わたしは彼女の手の表情に見とれている。
冬の日差しが横から差し込んで、
彼女の手にスポットライトが当たる。

彼女の瞳は無限に謎だ。
色のついた宝石玉に似たものがある。
名前を知らない。
笑うときも泣くときも
いつでも美しい。
限りなく奉仕したくなる。

大腿部前面から内側を通り、殿部にかけての部分は
皮下脂肪が適切な具合に充実し、
皮膚は張り、輝いている。
そこには緻密に静脈が張り巡らされている。
羞恥に昂ぶるとき静脈は拡張し、
周囲の皮膚は紅潮する。
静脈をせき止めるように拘束したときも、微妙に色を変える。
撫でる、さする、叩く、キスをして、吸う、いろいろな刺激に対して、
それぞれに色を変え、表情を変える。

わきの下、上腕の内側部も、静脈の表情が見やすい場所だ。
彼女が眠っているとき、乳房の充実感を手のひらで楽しみながら、
上腕内側部の血行を見つめている。
静脈の一部を指で押さえると、そこから先は血行が途絶え、
別のルートで流れ始める。
彼女の乳房を手のひらでまたは唇でまたは顔面で
感じているとき、わたしはとても安心する。
これは幼時の記憶なのだろうか。

クリスマス前の一ヶ月ほど、
わたしは彼女に耽溺していた。
これほどの宝石が他にあるだろうか。
そう信じていた。

しかしそれは他の男性にとっても宝石であり、
彼女は自由だ。
わたしにはどうすることもできない。
言葉が充分には通じないこともあり、
ネコ、とまではいわないが、何か不思議な愛し方になっている。

そしてクリスマスが過ぎ、
いまは静かに、写真を現像し、
頼めば、ムーミン・トロールの絵を描いてくれる。