本田宏氏 開業医について

 週刊東洋経済の2006年10月7日号で、業界や職種による賃金の比較「年収じゃ見えない!稼ぎの本当の裏側、日本人の全給料」が特集されています。これによると、時給トップ3は、1位が弁護士で1万402円、2位が航空機パイロットで8226円、3位がフジテレビで7582円。大学教授が6196円で6位、医師は4985円で11位でした。

 これら勤務医の給与(生涯賃金)が大手企業のサラリーマンよりも低い事実が報告され、さらに勤務医の過酷な労働実態が新聞などで明らかとなり、さすがに最近では、勤務医が法外に高給を取っていると思う人は少なくなったように感じます。

「借金は8年を経過した時点で1/3を終わりました。開業当初は家内と良く笑いながら食事をしていました『世の人は開業医がまさかこんなもの食っているとは思わないだろうな』と。またそれは驚くことに長者番付に名前が載っている状態でだったのです。長者番付に名前が乗るような状態でも、税金(これが泣きたいほどすごい)と借金を払うと残りは……(ちなみに借金は経費にはなりません、借金の利息が経費になるだけです)、新規開業の先生方はみなさん分かるでしょう。(中略)一般開業医の高収入は、そのように自らの仕事を他人に委託して行った結果として得られる『成功した社長的』なものではなく、自らの身を粉にした分だけが得られるものであり、それを辞めたときに収入がなくなります。高収入な開業医はそれだけ彼の身もすり減らしており、『ぼろ儲け』に見える開業医の身体も同時に『ぼろ』にし続けているのです、そこに人に誇れる正当な対価が生じます。」

 最近は、勤務医の現場の過酷な労働環境は広く社会に認知されてきましたが、開業医の実態は正しく伝わっているでしょうか。「開業医は儲けすぎ」が一人歩きしたままでは、医療費のパイは削減し、開業医から勤務医へ医療費をシフトするだけでいい、という小手先の改革が進められる危険性が高いと私は懸念しています。