正岡子規

悟りといふ事は如何なる場合にも
平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、
悟りといふ事は如何なる場合にも
平気で生きて居る事であつた
『病状六尺』

人に希望は初め漠然として大きく、
後漸く小さく確実になるならひなり
『墨汁一滴』

いくたびも雪の深さを尋ねけり

希望の零となる時期、
釈迦はこれを涅槃といひ
耶蘇はこれを救ひとやいふらん
『墨汁一滴』

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人に希望は初め漠然として大きく、
後漸く小さく確実になるならひなり
との一節は
はじめに幻想的自己愛があって
それが次第に社会と適合したアイデンティティに変化していく
ことを指しているようだ。

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平気で生きて居る事であつた

といい

いくたびも雪の深さを尋ねけり

といい すばらしい