ギョンビン、高度と高速で意識も薄くなりがち。
アナスターシヤが無線で話しかける。
わたしが国境を越えた時の彼の話、
覚えてる?
この世で信じ愛した唯一の人。
でもあの日から、
彼の運命が変わったの。
わたしの自由と引き替えに、
彼は暗闇に残ったの。
どんなに残酷だったのか、
再会した時に知ったわ。
あんなにも心の中にいた人なのに、
手も触れないまま、
すべてが終わった。
こんなことなら、
再会しない方がよかった。
でも、
父を殺したことも、
多くの人を殺したことも、
すべて赦すことにしたの。
だけど最後に、
それを伝えられなかった。
(タランチュラ、傍受していて、
すべてが報われる。)
ギョンビン、あなたはいま、
世界最速で飛んでいる。
限界を超えようとしている。
どんなに過酷なことか。
分かるわ。
一人で戦っていることも。
でも、もう一人じゃない。
数千キロも離れているけれど、
わたしが一緒よ。
(ギョンビン、すべてが報われる。)
ギョンビン、
聞こえる?
(タランチュラは飛行機を操縦しながら、
傷が悪化し、意識が遠のく。)
ミンからテッヒョンへ
「テッヒョン、
速度は限界を超えている。
こうやって
空で最期を飾るのも悪くない。」
テッヒョンからミンへ
「なぜ、
最期まで俺を追う?
お前には守るべき人がいるのに。」
ミンからテッヒョンへ
「これはおれたち二人の問題だ。
テッヒョンとギョンビン、
タランチュラと俺とのな。
お前が俺の立場でも、
同じことをしただろう。
勝敗のある争いではなかったが、
このままでは終わりにできない。」
テッヒョンからミンへ
「ギョンビン、
お前のように自由な身だったら、
必ず生きて帰る。
無駄に死んだりはしない。」
(このときすでに、テッヒョンは傷の悪化により、
ギョンビンの攻撃がなくても、
自分が飛行機とともに消えることを自覚している。)
ミンからテッヒョンへ
「テッヒョン、
すべて終わった。」
(ギョンビンのミサイルは尽きた。
テッヒョンの脳裏をさまざまな場面の
アナスターシヤの姿がよぎる。
テッヒョンは実質、死んでいる。
ギョンビンはアナスターシヤの
ネックレスを取りだし懐かしむ。
婚約者の姿、そしてアナスターシヤの姿がよぎる。
そして二つの機体は接触し、大破。
レーダーから消える。)