拘束は誰のために必要なのか

千葉県の老齢者介護施設で
虐待の疑いという。
拘束したり、「おり」のようなものを使った疑いとのことで、
拘束については一部認めている。
さらに職員がテレビインタビューに応じ、
(正確ではないが、概ねを言うと)
「これを虐待といって非難されるなら私たちはどうしていいか分からない」
といった意味の、報道に対する抗議を述べていたようだ。

こういった場合、二つの側面がある。

1.
あってはならない事態が起こっていた可能性。
代替方法があるのに、職員・施設の都合で勝手に「拘束・監禁」の方法がとられた可能性。
これは許されないことである。

2.
代替方法はなく、やむを得ない場合。真実やむを得ない場合であれば、それは社会として受け入れなければならない。家族も理解しなければならない。

これについては、そのような、「やむをえない」という場合はないのであって、
どんな場合でも、職員を増員しつつ対応に工夫を重ねることで対処できるはずであるとの考え方がある。
特に家族の感情としては、非人間的「虐待」など、許せるはずがない。

また一方、ケースによっては、そのような緊急処置が必要な場合があるのであって、特に他の多数の入所者のにも配慮した場合、適切な妥協点があるはずであるとの考え方もある。

厳格に「非人間的処遇」は間違いだと言い切ることはたやすい。
施設としても、そのような対処困難なケースを引き受けなければよいだけである。
あるいは、家族を呼び出して、付きっきりにさせて、対処する仕方もある。
それが果たして「施設側の防衛的対処」なのか、「人権に配慮した処遇」なのか、判断が難しい面もある。

もし、施設を改善し、職員の質と量を高めることで対処できるなら、それは一面では行政の問題でもある。
充分な報酬を保証しないで、施設と職員の確保を指導することはできないはずである。

一部経営者によれば、
処遇困難な入所者にたいして、薬剤大量投与、拘束、監禁をしてはならないので、「公的機関」を用意して、一定以上の介護を要するケースは、公的機関で面倒みて欲しいとの、強い要望が繰り返し出されている。
つまり、世間から疑わしくみられ、しかも、お金もかかり、しかも、
他の利用者を不安にさせるようなケースは、扱いたくないと言うわけである。

今回の告発も、元職員によるというもので、
内部告発である。

以上、多彩な論点があることを踏まえて議論が深まればよいと思う。
千葉県知事のコメントは、まったく表面的なもので、
事態を理解していない市民に対して、一時的に取り繕うだけの発言である。
行政の長として、軽い気持ちで非難するなら、本腰を入れて考えてみてくださいと、言いたい。
解決は簡単ではないはずである。