昨日夜のニュースショーでは各局一斉に、タミフル問題を報じていた。
中高生くらいの若者が、インフルエンザと診断されてタミフルを投与され、
行動異常を呈して、死に至るというもの。
自動車に飛び込んだり、マンションから飛び降りたりしているという。
遺族会が出来ていて、厚労省に、タミフルの危険について啓蒙して欲しいと
申し入れているが、
厚労省では因果関係の認定は出来ないというのみ。
以前の報告書では、医師と患者にアンケート調査を行い、
行動異常の発生とタミフル服用について、
インフルエンザの場合、行動異常はタミフルを服用しなくても起こっており、
タミフル服用時との統計的な有意差はなかったとしている。
数字としては、どちらも10~11パーセント程度に行動異常発生であったと記憶している。
有意差がないということは、この局面では、タミフルは、
悪いこともしていないし、いいこともしていないということだ。
タミフルはインフルエンザウィルスの増殖を抑える薬なのだから、
行動異常発生に関しても、多少は抑制効果が現れてもいいはずだと思う。
別の薬剤、アマンタジンについては、だんだん効かなくなっているという話で、
これもまた困ったことなのであるが、
進化・変化の速いインフルエンザウィルスらしいことではある。
結局、当局見解では行動異常はインフルエンザ脳症によるものだということになる。
インフルエンザ脳症のせいだとして、対策は示されていない。
厚労省としてはタミフル備蓄を指令したメンツもあるだろう。各所との関係もあるだろう。
そして、ここまで問題になっているのだから、実質的に、危険の啓蒙としては充分で、あとは各人で考えて欲しいということなのだろうか。
お役所としては、人間の命も、数字に変換されて、
少数の発生であれば、国として号令はかけないということだ。
私たちは各人の家族の問題として考えなければならない。
それは数字に還元されない。
統計数字としてはそうなのだけれど、どうなんだろう。
タミフルを使用しなくても、
インフルエンザにかかった人のある割合が行動異常を呈し、
ひいては死んでしまう可能性があるとして、
では、どうすればいいのだろう。
行政には行政の都合があるだろうから、それは脇に置いておく。
個人としてどうすればいいのだろう。
自分に中学生の子供がいるとして、インフルエンザにかかり、
医者からタミフルを投与された。
親として、飲ませた方がいいものかどうか。
タミフルを使っても使わなくても、どうせ行動異常が出るのだから、「飲め」とは思わないだろう。
そうではなくて、タミフルを「飲まない」のはもちろん、インフルエンザ脳症による行動異常にどう対処するか、考えなければならないのだ。
数日、あるいは長くても一週間程度でいいのだから、外出しないように厳重に見ているしかないだろう。
急性脳症に関しては、有意差なしだから、タミフルを飲む理由はない。
困るのは、インフルエンザ脳症による後遺症というものがあったとして、
それがタミフルを使用すれば防げたかどうかということだろうか。
タミフルはインフルエンザウィルスを殺すのではなく、増殖を抑制するという程度らしい。
タミフルを飲んで時間を稼いでいるうちに、体内の抗体がてきてウィルスをやっつけるのを待つことになる。
若い人に見られることは何を意味しているのだろうか。
異常な高熱や肺炎や筋肉痛や脱水やそんなことには
タミフルは多分効いているのだろうと思うが、
行動異常について効かないということは、
タミフル投与前に何か異常な反応が起きて、あるいは何かの物質が産生され、
あるいはどこかの組織が破壊され、しているものだろうか。
かなり初期の問題で、だとすれば、そのあとに何をしても手遅れだということになるのだろうか。
そのことと、若い人というキーワードは関係しているように思える。
あるいは別の推定として、
タミフルによってインフルエンザウィルスの増殖は少し抑えられ、行動異常発生についても多少は抑えられるが、
タミフル自身の毒性があり、結果として、有意差なしの水準になる、ということも考えられる。
しかしこの推定では、タミフルの功罪がちょうど拮抗し、最終的に有意差なしになるという不思議な事実を説明しなければならないので、すこし無理があるかと思う。
というわけで、困った問題である。
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その後、28日に厚労省が注意を喚起し、熱発したら1~2日は一人にしないで見守るようにと発表した。