・異種を好む傾向
これについてはいろいろな研究があり、例えば、カゴの中にマウスをたくさん入れて、配偶行動を見る。すると、HLAタイピングで遠いもの同士が引かれあう傾向があったとする、有名な、古い古い話。
HLAタイピングというのは、ヒト組織適合性抗原というもので、臓器移植の時に、これが近ければ、拒絶反応が起こりにくい。また、ある病気にかかりやすい傾向とか、HLAを調べれば分かったりする。
異種を好む傾向は、遺伝子の混合が進み、有利な遺伝子を利用できるチャンスが増えることから、合理的であると考えられる。
・同種を好む傾向
これは主に人間の社会生活の都合から来るもので、たとえば財産を確実に残すための戦略、家柄を維持するための方法、などと関係する。
あまりに同種を好みすぎると遺伝的不都合が生じてしまう。しかし、家柄を維持するためには、例えば、ヨーロッパの王族貴族の婚姻などを見てもわかるように、次第に狭い範囲の中から選ぶようになってしまう。そして正妻はそのような人を当て、第二夫人以降には別の選択基準で対する場合が多い。
・こうしてみると、異種を好む傾向はDNAの原則で、同種を好む傾向は脳の原則であると考えられる。人間はこの中間で苦しみもがく。