ゴーゴリ「外套」吉川訳

講談社文芸文庫新訳ゴーゴリ集である。
250ページの文庫で1200円であるから、高い。
そして、その内容は。

「外套」は語りの文学の側面を持ち、語呂合わせなど、いろいろな試みをしているのだといわれる。
だから、文体はこの場合、本当に「語り口」なのだと思う。
そして日本語になった語り口はどうなのか?
ロシア語を知らないのだから、なんとも言いようがないのだが、
研究の結果の新訳がこれだというのなら、
これがいま手にしうる最高のものなのだろうけれど、
私としてはやはり不満である。

語呂合わせなどは確かに日本語でも試みていて、
地の文から完全に浮き上がっていて、いい味わいだった。

そのほかにはどうなんでしょう。
例えば、町田康がこの文章を語ったらこうなるかなというイメージで書いてみるとか、
なんかもっと工夫があれば、1200円も納得できたと思う。

でも、確かに、ドストエフスキーに通じる不潔な感じはよく出ている。

ドストエフスキーの翻訳は、岩波版よりも、新潮版が好きだ。
これはもう、ドストエフスキーはこういうものだと読んでしまったのだから、どうしようもないだろう。
まあ、どうでもいいことだけれど。