小説家、グレイス・ペイリーについて、村上春樹の紹介がある。
グレイス・ペイリーが寡作であることについて、
二つの理由があるという。
一つは、彼女の人生に三つの柱があり、
それは家庭と政治と書くことである。最初は育児に忙しく、
そのあとは、政治に忙しかった。それゆえ、佳作であった。
もう一つの理由は、彼女に野心がないことである。
「孫の顔を見ることの方が、一つの小説を仕上げることより大事」
という。
野心という、まことに荒々しい言葉が、否定的にではあれ、
放り出されて見ると、考えさせられる。
私には多分、野心がある。
過剰なくらいに、ある。
しかしそれは実現しない野心であって、
大変困る。