永井荷風は孤高の文士として生きた。
社会との関係を最小限にとどめ、
都市の中の隠者となった。
その孤高を支えたのは経済的安定である。
優良株を買い、資産の運用に心を砕いた。
印税、原稿料、株の売買記録も、細かく記している。
他人に関わることをしないかわりに、
他人の世話にもならない。
個人主義を徹底するには、経済的な自立がなければならない。
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生きているからその証として日記を書くのではない。
日記(芸術)を書くためにこそ毎日を生きる。
荷風は実人生を芸術に捧げた。