小川国夫「アポロンの島」2

愛知県で銃を持って立てこもった人物がいて、

警官が一人命を落とした。そんな事件が起こっていた。

憲法改正の手続きに必要な法律、国民投票法が議会を通過した。

私の身辺も落ち着かない。仕事も私生活も

思わしくないことばかりが続くのだった。

心の安らぎはどこにもない。

そんな中で偶然「アポロンの島」を手に取り、

読み始めたものの、

切れ切れの映画フィルムを見ているようで、

まとまった印象には至らない。

読んでいても文字がイメージに変換されず

つるつると滑ってゆく。

しかしなぜか部分部分のイメージには喚起力があり、

自分の内部の記憶が掘り起こされた。

思いがけない記憶が回想され、しばらくのあいだ

自分の過去を振り返ってみたものだった。

かなり変わった読書体験であった。