<生命・自由・財産の保護サービスはマーケットによってより安く・より効率的に供給される>。この主題の提起こそが Gustave de Molinari の政治・経済思想への最もオリジナルな貢献である。それまで生命・自由・財産の保護サービスは国家が独占して当然だと考えられてきた。<経済法則は国家機能の供給にも適用できるし適用されるべきである>というのが Molinari の洞察であった。彼は経済法則を国家に適用することを試みた。そこで彼の出した結論は<警察から道路・街灯の整備、ゴミ回収、下水処理、教育まで、国家の独占はじっさいマーケットによっておきかえられる>というものだった。 Molinari の議論を要約すると、<たとえば靴やパンは(国家よりも)マーケットによって効率的に生産される。それゆえ靴やパンの生産はマーケットにゆだねるのが望ましい。これとまさに同じ理由で、国家の独占するあらゆる機能はマーケットにゆだねるのが望ましい>ということである。そしてこれは暗黙のうちに<「私有財産アナーキズム」が自由市場の論理の必然の結果であること>そして<「完全無政府」まで国家権力の最小化を追求するのが自由市場の論理の貫徹であること>を述べているのだ。 by David M. Hart