作家の大江健三郎さんが新作長編『らふたしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』(新潮社)を刊行した。幼児体験からのうつ病に苦しむ映画女優サクラさんの生の軌跡と、ポーの詩に登場する永遠の美少女「アナベル・リイ」のイメージを重ね、現代人の魂の喪失と再生の道筋を探る。
悲嘆と憤怒を超えた再生の道。
ラストシーン。サクラさんの頭上には星が輝く。
「らふたし--』を書き終えてから、うつ病を克服したウイリアム・スタイロンの手記に、“諸々の星を見ん”などダンテ『神曲』の地獄篇が引用されていたのを思い出した。僕も『神曲』のファンとして、星が見える場所というのは苦しい場所から抜け出たことを意味するように書いたのです」と作者。
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上で紹介されているのは、ウイリアム・スタイロンの「見える暗闇 Visible darkness 」。
昔読んだ記憶によれば、アルコールが絡んだうつ病。
途中、医学的には不正確な記載もあり、注釈が必要だと思うが、
それでも、主観的体験を綴る技術には感嘆する。
うつはVisible darknessであるというのである。文学者である。
スタイロンの作品の中では、「Sophy’s choice」が一番好きだ。
南部出身作家として分類され、黒人問題や奴隷制などの記述もあることで知られる。
しかしそういった題材のものは、私にはあまりおもしろくなかった。
翻訳は「ソフィーの選択」で出版されているが、この翻訳の見事なこと。
原文と比較して読んで、感嘆した。
同時期の、ひどい翻訳をあげれば、
学生時代に手に取った、「失われし自我を求めて」。
原文を読んで、分からないところを参考にしようとすると、
ない。
省略しているのである。
あんまりだ。
昔の日本は、そんな本が出版されている三流の国だった。
最近、英語の勉強には、アメリカのドラマがおもしろいと聞いた。
たとえば、Grey’s Anatomy.
字幕が英語で出る。
子供が見てもいいように、変なスラングは使っていないそうで、
よい英語なのだという。
ブッシュの英語よりずっといいらしい。
映画は、ドラマのような配慮がないので、よく意味が分からない言い回しも多く、
勉強には向かないらしい。
向くのもあるのだろうけれど。
うつになりそうになったときは、
ドラマ Ally McBeal がいいという人がいた。
NHKで放送したときの題名は、アリーマイラブ。
Love, couplehood, partnerships… The idea that when people come together they stay together.
I have to take that with me when I go to bed at night, even if I go to bed alone.
That’s the McBealism.
(愛の、恋人や夫婦の絆。人は簡単に別れないって信じていたいから。
そう思いながら眠りにつきたいのよ。ひとりで寝るんだとしても。
それが“マクビール主義”。)
翻訳もあるし、英語字幕もあるし、内容もよさそうで、いいかも。
Grey’s Anatomyは医者もので、
ERよりはおとなしいらしい。
Greyという人が主人公だと聞いた。
医学部の一年生は、
Gray’s Anatomyで勉強する。
13センチくらいあるような厚い解剖学の教科書だ。
eとaの違いがあるようだ。
最新版を翻訳が出る前に楽しもうというのも、いいかも。
リージョナルコードに注意。