ある患者さん。
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たとえば、台所の排水溝が我慢できない。
排水溝を清潔に保つためにおいておく、
タブレットをケースにつめたもの。
それがいつまでもいつまでも汚れたままで置いてある。
その無神経さに絶望する。
一事が万事で、
すべてが嫌悪である。
むしずが走る。
怠惰な人間なんですよ。
ただ口先で幼稚な理屈をいうだけ。
世間の中で生きていないから自分がどんなにバカで冷酷か分からない。
パンティとパンストをいっぺんに脱いで、
そのまま、形を残して、置いてある。
人によっては色っぽいんでしょうけど、
ただ興ざめなだけで。
自分でもね、この世で生きていくには無理があると思っているんでしょう。
仕事もしない、
付き合いもない、
付き合っても変な人だけ、
これじゃますます世界がいやになるでしよう。
話す相手は変人の母親だけ。
でも、いい人たちって、意外とシビアなんですよ。
グループAとBがあったとき、
どっちがいいか、競争みたいになって、
そのどっちに自分は入っていたいか、
いつも値踏みしているんです。
で、その人がAに入ったとすると、みんなBに行っちゃうじゃないですか、
だからその人はどこにも入れてもらえない。
一人一人はいい人でやさしいんですよ。
でも、集団のことを考えたら、
その人を入れることで、大事なメンバーが離れていきそうで、
入れられない。
厳しいもんですね。
一人で絵でも描いていればいいんですよ。
母親にお世話されてね。
最期は母親と一緒に、でしょうね。
無理ですから、そのあとは。
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で、あなたはどうする?
わたしはこのまま病院ですよ。
母と妹の生活には私のいる場所がないですから。
一人暮らしとかグループホームでデイケアを使えば?
昼は作業所でもいいし。
またそれですか。
そのうち考えますよ、きっかけが必要なんです、確かなきっかけが。