記号 みなし

言い古されたことだけれど、
改めて、人間はなんてばかげた記号にエネルギーを使うものだろうかと思う。

どうせバッグだと思えば、
何だっていい。
その記号がついていなくても。

子供の頃、
葉っぱをお金に見立てたりしたが、
貯金通帳の中に使いきれないお金をためている人は、
葉っぱ程度のものでしかないだろう。

りっぱなおうちに住んでいて、他のうちの三倍は高価だとして、
そのおうちは一体、他のうちの三倍の値打ちのあるものなのだろうか。
三倍冒険したほうがいい。
(五倍くらい冒険しているけれど、言わないだけだといわれそう)

子供の頃、ばい菌鬼をしたりしたけれど、
本当にばい菌だと思って興奮した。

いまも、みなしているものが何と多いことだろう。
ブランドなんかそう。

たくさんの商店が嘘つき商売をしたけれど、
嘘つきをありがたがったのだから、仕方がない。
嘘つきだと自覚があったから嘘つきになっただけで、
自分は本物だと誤解しているうちは、
誰からの訂正も受け付けない。
あなたの相談している占い師はどうですか?
自分を本物だと誤解していませんか?
大抵が、自分には未来はわからないが、人の道はわかるとか、
そんなことをいうものです。

きれいになりたくていろんなことをしているけれど、
3年くらいたってから写真を見ると、
とても恥ずかしかったりする。
若かったからじゃないよ。
バカだからだし、それはずっと変わらない。

ちょっとの布にたくさんのお金を払う。

ちょっとの食材にたくさんのお金を払って、ありがたがる。
そのうちみんな飽きる。
食い物屋でアルバイトするといいよ。
すぐにわかる。
牛丼屋だって、アルバイトしたあとは、食べたくないもん。
本部から運ばれてくる冷凍牛肉の怪しいこと。

子供の頃、ごっこ遊びをして、
本当にスパイになったようなつもりだったし、
実際、拳銃で相手を撃っているような気もした。
大好きな男の子をつかまえて朝ごはんごっこをしたりした。

人間は、つもり、と実際の区別がつかなくなるから、
本当に怖い。

ごっこなのか、実際なのか、
区別は実はない。

証券取引所の取引が実際何なのか、
大いに疑わしい。
最後に高値でつかんだ人が世界で一人だけいたとして、
その人が自己破産したとして、
それで帳尻はあうんだっけ?
そんなことがおこらないように、ずっとずっと、
最後の一瞬を延ばしているんでしょう?

いまわたしたちは未開民族の暮しを見て、
へんな化粧に驚き、変な部分を伸ばしているのに驚き、
おかしなことにエネルギーを使うものだと思っているけれど、
1000年後の人類から見たら、
いまのわたしの暮しなど、
とてつもなく、笑えるものだろう。

1000年も飛ばなくても、
ネコから見ても、かなり変だろう。
匂いも出ない四角い画面の前で、
オイシソーなんて言っている。

人間は匂いも温かみもない二次元の何かに発情したりしている。
それを大事にしていたと女が怒ったりしている。
男も女も同じ「みなし」を共有している。
ただの写真ジャンとネコとしては思う。

同じものが、
人間には、鰹節の匂いのついた石ころであり、
ネコには、小石のように固い鰹節なのだ。

ナントカ小学校がきらきらまぶしく思えた頃もあるが、
大人になってしまえば、何のかわりもない。

みんなただの約束事だった。
「みなし」ているだけだった。

ゲームに夢中になられても、
わたしにはついていけない。
脳が変な風に興奮しているだけ。
無駄ジャン、
家族のために働けよと言いたくなる。
あんたを大黒柱と「みなし」てるんだから。

腹がいっぱいになることと、
病気になって死ぬことと、
子供が生まれることは、
リアルだ。