新潮日本語漢字辞典をひとりで作った人

新聞で。


新潮社社員、53歳。新潮日本語漢字辞典を10年かけてひとりで編集した。
中国から来た漢字が、現在は独自の日本文化であることを宣言した辞典と
紹介されている。

わたしにとって、ヒーローだわ。

仕事というものは、個人の刻印がどんどん薄くなりつつある。
科学の領域ではそれが悲しい。

普遍的真実であるからには、
個人の刻印は必要ない。
誰かがやればいつか必ずみつかるだろう。
それだけのことだ。

方法に関しての工夫は、それは大変なものだ。
偶然も作用する。
しかし、いつか誰かが何らかの方法で突き止めて、
決定するだろうと思うし、そのプログラムに違いはない。
科学とはそういうものだ。

研究チームがいくつもあって、
一番乗りを競っているという場合、
極端にいえば、ひとつあれば、いつかは到達するだろう。
それが早いか遅いか誰なのか、
ほとんどどうでもいいことだ。

海水浴場で指輪をなくしたとする。
きちんと探せばいつかはみつかるだろう。
だが、それだけのことだ。
なんてワクワクしないことだろう。
そんなことは誰かがやればいい。

たとえば、円周率の3.14の次の数字が何かを
誰が最初に突き止めるかという問題だったとする。
数字のどれかにきまっているが、それがどうしたというものだろう。
知っても知らなくてもどうでもいいようなものだ。
すべてが過去になってしまえば、物語は全部消去されてしまう。
ただ3.141という数字があるだけ。

しかしその先、円周率は、無限に続く数字で、しかも循環しないのだというのだ。
これってめまいがする。
そしてどうしてそんなことが分かったの、と思う。

何に興味があるのか、それぞれ違うということなのだろう。

医学の場合は、目の前の患者さんの命がかかっているので、また別の重みがあるけれど。