ねえ、あの人って昔からあんなだったの?
昨日は困っちゃった。
お前、昔の男が忘れられないんだろう、って、こうよ。
もういつもいつも嫉妬なんだから。
それもいろんな人を順番に並べて、
よく覚えてるもんだわ。
男は嫉妬深い。
男は女より精神年齢が低い。
それはあんたから教えてもらったけど、
あんなにも子供なわけ?
あれって一種の病気?
もうお互い大人同士なんだし、
第一、あたしに向かって、昔の男がどうとかいうなんてお門違いだよね。
家柄がいいとか、金持ちだとか、才能があるとか、
そんな羽振りのいい人たちが、羽振りの一番いい一瞬に、
うちの店に来るわけじゃない。
あんたなんか嫉妬してもかなわないわ。
当たり前だよね、そんなのとあんたを比べたりしないって。
あれは仕事なんだからさ。
それがわかんないかな。
どうかしてるよ、まったく。
あたしの作ったサラダ食べながらわたしの過去の男性に文句つけるのも
どうかと思うな。
仕事がストレスで、
どうしようもなくなって、不安になって、
わたしに八つ当たりしてるって、いうのも分かるけど、
それじゃあ、わたしはどうすればいいのよ。
あたしの過去の男と張り合って無理してる?
まさか、張り合って相手になるようなもんじゃないよ。
アラブの王様とかさ。
性格障害でもないの、これでも?
病的嫉妬とか、妄想性障害とか、リストを見ると結構当てはまるけどな。
基本が違うわけ。そう。
じゃ、あの人は、うつ病でもないし、性格障害でもないし、
なんなわけ。正常だとでもいうの?
わたしはどうすればいいのよ。
ごめんね、こんなに涙が出るなんて。
だって、情けなくて。
もう自分の過去は変えられないもの。
自分の腕を切って痛みを感じる替わりに、
わたしを傷つけて、痛みを実感している?
わたしは何なの?
腕みたいに傷ついていればいいの?
わたしの心はどうなるのよ。
いやなら別れるかって?
あの人はそれ以外はいい奴だよ。
仕事をまじめにやってくれるから、
わたしはありがたいよ。
こんな人いなかった。
みんなね。自分のステイタスにふさわしい女って感じで、
わたしを連れて歩いたり、
旅行に行ったりするわけでしょう。
あの人はそうじゃなくって、わたしを安心させるために働いているんだ。
変な奴だよね、
お前の夢はそれなのかと言いたくなるけど。
あたしみたいな奴にはそれがなんだかもう申し訳ないくらい大切なんだ。
あたしが夜、ちょっとバイトすれば、お金くらいはできるけど、
それは違うお金なんだ。
あたしがあの人と一緒にいてあげていることを
どうして信じられないんだろう。
それが一番の証明なのに。
わたしね、最近ちょっとお化粧が下手になってきたんだ。