てんぷら屋の店員

てんぷら屋で見るともなく見ていると、
店員は非常に忙しそうである。
席は30パーセントくらい埋まっていた。

カウンターでてんぷらが揚がると、それを配膳する。
カウンター席にはてんぷらをあげる職人が直接配膳するが、
4人がけ座席には、店員がカウンターで受け取って、配膳する。

店員はパートさんらしくて、
てんぷらの名前を言われても何がなんだか分からないらしい。
でも、一所懸命動いている。

箸がうまく使えない。
もどかしい思いで見ていると、
配膳された側のカップルも、二人とも、箸の持ち方がおかしい。

店員は通りかかった先輩店員に聞こうとして、
先輩店員は、はいよ、という感じで、自分で配膳し始めた。
すると、この人も、箸を使えない。

もうすでに、標準的な箸の使い方というものはなくて、
とにかく食べものを落とさずに移動できればそれでいいらしい。
美しさなどは所詮主観的なものだ。

ビールをジョッキで飲んでお替りするグループあり、
支払いを割り勘でするグループあり、
ご飯のお代わりを出したり、新しい注文を伝えたり。

店員さんはとても忙しそうだ。
しかしベテランの調理係は気になるらしく、
自分で外に出て、給仕も手伝っている。

多分、手順よくこなせば、そんなに忙しくもない仕事量なのだろう。
優先順位が分からないので、ばたばたするのだろう。

ベテランさんにはそれが見えるらしく、
すこしいらいらするのだと思う。

「次はビールジョッキ、お替りだよ」などと
声をかけている。

店員さんは100パーセントの力で働いていると思う。
難しいものだ。

コツがあるのだろうけれど、教えられるものなのか。
新人には無理というもので、給料を抑えて人を増やすしかないのか。

箸を使えない人には、
長い箸はおなさらに使いにくそうだ。
タングでもいいのになあと思う。
そうもいかないか。