自転車野郎

自転車野郎がいて、
松戸まで行ってきたり、箱根まで行ってきたりする。
松戸まで、往復で6時間という。
地図を調べて、道と公園を把握、休憩と水の確保、排泄の計画もする。
箱根駅伝のコースもいいが、車が通るので、
旧東海道が自転車にはいいコースなのだという。

仕事はおもしろくない。
叱られてばかりで、少しずつしか上達しない。
女性は苦手だから、多分、一生一人だ。
なるべく誰にも迷惑をかけず、
ひっそりと暮らすつもりだという。
もっと広い家に住みたいとか、
もっといい自転車が欲しいとか、そんな欲望もない。

ただ違和感があるだけだ。
この世界と自分との、ある種の距離を感じる。

調子よくやっている人たちのようには、自分はできない。
友達も一人もいない。
親とも連絡しない。
スポーツ新聞にも、新聞にも、テレビにも関心がなく、
部屋にない。
携帯とパソコンはある。ゲームをしている。

生まれて、ゲームをして、自転車に乗って、死にましたと要約できそうである。